One year left -家族ごっこ-
「これからは母親のためじゃなく、自分のために生きろ」


「うん」


私はゆっくりと顔を上げて、彼の瞳をまっすぐに見つめながらしっかりと頷いた。


自分を縛りつけていた最後の呪縛(じゅばく)はきれいに消え去り、私の口から放たれた声には、確かな熱が宿っていた。


「大丈夫、俺がそばにいる」


碧くんは静かに視線を動かし、私の濡れた目元を慈しむように見つめてくれた。


そのきらきらと輝く琥珀色の瞳に自分の居場所を見つけて、私はもう一度、彼の広い胸のなかへと顔を埋めた。


耳元で聞こえる規則正しい鼓動と、身体中を包み込む彼の確かな体温が、自分でも気づけなかった孤独の隅々までを優しいぬくもりで満たしていく。


独りじゃない。


その幸福感に包まれながら、私たちは長い間、お互いのぬくもりを確かめ合っていた。


やがて、私のなかで逆立っていた痛みがすっかり消え去り、穏やかな静寂が部屋を満たした頃。


碧くんは私の髪を優しくゆっくりと撫でてから、名残惜しそうに、そっと抱擁を解いた。
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