One year left -家族ごっこ-
「元気に泳いでるな」


金魚鉢の前で足を止め、背を丸めるようにして覗き込む大きな後ろ姿が、朝の光の中に浮かび上がる。


「うん。可愛いね」


私は先にテーブルの椅子へと腰を下ろし、その広い背中へと声をかけた。


呼びかけに振り返った碧くんは、どこか満足そうに口元を緩めると、そのまま私の待つテーブルへと歩み寄ってくる。


「お母さんのごはん、食べよっか」


並べられた白い皿に視線を落とすと、彼は何も言わずに、隣の椅子へとその大きな身体を預けた。


「いただきます」


二人並んで声を揃え、作り置きを口にする。


碧くんは物静かにフォークを動かし、皿の上を淡々と平らげていった。


もしもこの家に残るのが私だったなら、これほど完璧な料理が冷蔵庫に用意されることなど、絶対にあり得なかった。


それをただの栄養として胃袋へと収め、空になった皿を手早くシンクへと片付けた。


その後、私たちはホームセンターへと向かった。


日曜日で混み合う店内のなか、彼を一歩後ろから追いかける。


愛ちゃんに必要なエサや鮮やかな緑色の水草、ガラス鉢の底に敷くための砂利を買い揃えて、確かな幸福感を胸に、家へと帰路に就いた。
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