One year left -家族ごっこ-
そして、最悪なことに目が合ってしまった。


反射的に後ろを向く。


心臓が跳ね上がり、全身の血の気がさーっと引いていくのが分かった。


どうか碧くんの目が悪くて、この距離の私に気づいていませんように、と願った。


「帰ろう」


震える声でそれだけを告げると、呆然とする三人を置き去りにして、猛スピードで自転車のペダルを漕ぎ出した。


「え、萩花!?」


背後で夕紗が私の名前を呼ぶ声が遠ざかっていく。


もうこの場から逃げることしか考えられなかった。


どうしよう。


本当にどうしよう。


もし見られていたら。


もし私だと気づかれていたら。


ううん、少し距離があった。


夕暮れの逆光のせいできっとよく見えていないはず。


大丈夫、大丈夫だから、と必死に自分に言い聞かせながら、ただ前だけを見て自転車を走らせ続けた。
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