One year left -家族ごっこ-
近くの建物の陰へと滑り込み、自転車を飛び降りる。


青ざめた手でポケットからスマホをつかみ、夕紗へ発信した。


呼び出し音がやけに長く感じられる。


ようやく繋がった画面に向かって、声を絞り出した。


「もしもし……」


『ちょっと萩花、急にどこ行ったの!?』


「それより碧くんは?もういなくなった?」


切迫した私の声に、電話の向こうの夕紗が一瞬言葉を詰まらせる。


『えーっと……』


「なに……?」


『今、うちらと一緒にここにいるよ』


ガーン、と頭を硬い鉄パイプで殴られたような衝撃が走った。


視界が一瞬ぐにゃりと歪む


どうして。


どうしてそこにいるの?


まさか、私がいたことを知られた……?


一番知られたくない、一番見られたくない碧くんに、ダンスを見られたの……?


身体が震えてまともな呼吸さえできなくなる。


そんな私の絶望なんて露知らず、スマホの奥からは、希歩と凛のはしゃいだ黄色い悲鳴が小さく漏れ聞こえていた。
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