One year left -家族ごっこ-
「親父から連絡。三時頃に家に着くって」


その一言を耳で捉えた瞬間、私の喉の根元が小さく引き締まり、皮膚の裏側が一瞬だけ冷たくこわばった。


長年染みついていたお母さんの気配に、身体が反射的な緊張を覚える。


碧くんは私のわずかな動揺を見逃さず、少しだけ眉をひそめて覗き込んできた。


「……大丈夫か?」


「うん、大丈夫。自分でも不思議なくらい、落ち着いてるよ」


嘘偽りのない言葉を返しながら、私は自分の内側に宿る静かな熱を確かめていた。


碧くんは私の瞳の奥にある頑なな自立心を読み取ったようで、安心したように目元を緩めると、大きな手で私の髪を優しく梳(す)いた。


残りのポテトを二人で最後まで大切に平らげ、テーブルの上を綺麗に片付け終えたとき、リビングの時計の針は間もなく午後三時を指そうとしていた。


玄関のドアが勢いよく開く音に続いて、廊下から降るように大きな声が響く。


「ただいま!」


その屈託のない響きに背中を押されるようにして私たちが顔を向けると、慌ただしい足音がリビングへと迫ってきた。


両腕に抱いきれないほどのお土産の袋を抱えたおじさんが、そのままの勢いで姿を現す。
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