One year left -家族ごっこ-
【透明】
おじさんの楽しげな声が、リビングの空気を小さく揺らしている。
露天風呂の心地よさや、客室の窓から見下ろした格別の美しさ。
声を弾ませて旅の記憶を語るおじさんの手によって、テーブルの上には上品な包装紙に包まれた温泉饅頭や、観光地らしい色鮮やかな銘菓が次々と並べられていった。
「本当に、今度はちゃんと予定を合わせて、四人みんなで行こう。碧の誕生日祝いも、そこで改めてやり直させてくれ」
大きな手が、愛おしそうに碧くんの肩を抱く。
「……もう十七だろ。誕生日祝いなんて、やらなくていい」
呆れたような声を漏らし、碧くんはその無骨な掌をそっと押し戻した。
その傍らで、お母さんは音もなく涼やかな足取りでキッチンへと向かう。
冷蔵庫の扉が静かに開閉し、人数分の麦茶がグラスへと注がれていく。
リビングへ戻ってきた彼女がトレイを置く瞬間も、氷の触れ合う音はほとんど聞こえなかった。
「ありがとう、香織さん」
おじさんがグラスを受け取る。
お母さんはただ、優しい微笑みをその唇の端に静かに張り付かせていた。
露天風呂の心地よさや、客室の窓から見下ろした格別の美しさ。
声を弾ませて旅の記憶を語るおじさんの手によって、テーブルの上には上品な包装紙に包まれた温泉饅頭や、観光地らしい色鮮やかな銘菓が次々と並べられていった。
「本当に、今度はちゃんと予定を合わせて、四人みんなで行こう。碧の誕生日祝いも、そこで改めてやり直させてくれ」
大きな手が、愛おしそうに碧くんの肩を抱く。
「……もう十七だろ。誕生日祝いなんて、やらなくていい」
呆れたような声を漏らし、碧くんはその無骨な掌をそっと押し戻した。
その傍らで、お母さんは音もなく涼やかな足取りでキッチンへと向かう。
冷蔵庫の扉が静かに開閉し、人数分の麦茶がグラスへと注がれていく。
リビングへ戻ってきた彼女がトレイを置く瞬間も、氷の触れ合う音はほとんど聞こえなかった。
「ありがとう、香織さん」
おじさんがグラスを受け取る。
お母さんはただ、優しい微笑みをその唇の端に静かに張り付かせていた。