One year left -家族ごっこ-
差し出されたお土産のお菓子を、そっと指先でつまんで口に運ぶ。


上品な甘さが舌の上で解けていくけれど、その味わいはどこか遠く、まるで砂を噛んでいるかのように味気ない。


私は、お母さんの静かな視線の行方を、息を潜めて追い続けていた。


彼女はおじさんの話に可憐に相槌を打ちながらも、リビングボードの上に置かれたあの金魚鉢には、ただの一度も視線を向けようとはしなかった。


話が一区切りついたのを見計らい、お母さんはゆるやかに立ち上がる。


その据わった瞳が、ゆっくりと私だけを捉えた。


「萩花。これから夕食の買い物に行きたいんだけど、ついてきてくれるかしら」


お母さんの呼びかけに、私は静かに頷く。


「いいよ」


「おばさん、俺も行く」


隣にいた碧くんが何気ない調子で声を上げ、私の傍らへと歩み寄ってきた。


「荷物持ち、いるでしょ?」


けれど彼女は、完璧な笑みを崩さないまま、遮るようにして首を横に振る。


「いいえ、二人で大丈夫よ」


心配そうに私を見つめる碧くんの視線を、真っ直ぐに見つめ返した。


「ありがと」


彼に向かって、小さく微笑んでみせる。
< 337 / 354 >

この作品をシェア

pagetop