One year left -家族ごっこ-
すぐに信号が青へと変わる。


「それで、課題は終わったのかしら。碧くんと祭りに出掛けられるくらいだものね」


再び規則的なウインカーの音が鳴り響き、車体が左へと大きく傾いた。


目的地であるスーパーの駐車場へと、滑り込むように車が入っていく。


「まだ終わってないよ」


「あら。どうして?」


「金魚のお世話してたから」


その答えが引き金となったのか、お母さんは鋭い手つきでハンドルを切った。


駐車スペースへと乱暴に滑り込んだ車は、押し潰すような硬さで急停止する。


前方へと強く揺さぶられた身体を、シートベルトが締めつけた。


完全にエンジンが切られ、不気味なほどの静寂が満ちた空間のなかで、彼女はゆっくりと私の方へ首を巡らせる。


私を真っ直ぐに捉えた、その据わった瞳の奥に、底冷えする暗氷の深淵(しんえん)が覗いていた。


「だったら、引きずってでも連れていくべきだったわね」


お母さんは勢いよくドアを開けて車を降りていく。


私もその氷結したような背中を追って、西日の沈みかける重い大気のなかへ足を踏み出した。
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