One year left -家族ごっこ-
自動ドアをくぐると、スーパーのなかの凍えるような冷気が、容赦なく私の皮膚にまとわりついた。


いつもなら真っ先に手を伸ばすはずの折り重なるカートを、私は無視して通り過ぎる。


お母さんの後ろを、静かについていく。


「ちょっと、萩花。カートはどうしたの」


不意に足音が止まり、振り返った彼女の視線が冷徹に私を射抜いた。


その細い眉が、不機嫌そうに中央へと寄せられる。


私は何も言わず、黙ってその眼差しを受け止めた。


「……まったく。なにしてるのよ」


向けられたお母さんの声は低く、剥き出しの刃のように私の肌を削っていく。


私は静かに視線を外し、入り口まで引き返した。


カートを一台引き出し、カゴを乗せてお母さんのもとへと運ぶ。


彼女の斜め後ろを、私は影のように追った。


「今日の夕食は何にしようかしら。雅也さんは軽めのものがいいって言ってたわね」


穏やかな声のトーンとは裏腹に、お母さんの足取りには、鋭い苛立ちの気配が滲んでいた。


色とりどりの瑞々しい野菜が並ぶコーナーを通り抜ける間、彼女は品定めもせず、次々と袋をカートへと入れていく。


カゴのなかが緑や赤の色彩で満たされていくのを、私は浅い呼吸の合間に、複雑な痛みを伴って見つめていた。
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