One year left -家族ごっこ-
「碧くんはお友達の家に泊まっていたんでしょう?何食べてたのかしら」


お母さんは歩調を緩めることなく、鮮魚コーナーへと向かった。


整然と敷き詰められた氷の上に、冷たく光る魚のパックが陳列されている。


「ジャンクフードじゃないかな」


お母さんは大げさに眉をひそめて、小さくため息を吐いた。


「お昼も二人してハンバーガー食べたでしょ」


「うん。どうして分かったの?」


「ゴミ箱に大きな袋が丸めて捨ててあったからよ。……三日分も作り置きした意味がなかったわ」


「作り置きなら、私が食べたよ」


「そう」


手に取ったパックに視線を落としたまま、その手元は微動だにしない。


お母さんは、私の言葉をただ無意味な音として聞き流すように、わずかに反った唇の間から乾いた息を漏らす。


「久しぶりにローストビーフ作ろうかしら。碧くん、好きよね」


彼女は独り言を呟きながら、私を置き去りにするように精肉の区画へと歩みを進める。


冷え切った空気の漂うガラスケースの前で、彼女の指先が、深い紅色の大きな牛の塊肉を値踏みするようになぞった。
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