One year left -家族ごっこ-
私はポケットからスマホを滑り出させると、震える指先で碧くんへのトーク画面を開く。


[今から、イオンの駐輪場に来て]


短い文字列だけを液晶に打ち込み、逃げるように送信をタップした。


冷え切った胸の底で、彼からの返答を待つ脈動だけが、痛いほど鋭く刻まれていく。


お会計を済ませたお母さんは、袋を抱えて自動ドアの向こうへと歩みを進める。


私はその斜め後ろを追いかけながら、手元の端末を見つめ続けた。


かすかな振動が走り、碧くんからの返答が暗いガラスの向こうに浮かび上がる。


[今すぐ行く]


短い言葉のなかに潜む彼の緊迫した気配が、私の骨の髄を熱く震わせた。


「お母さん」


自動ドアをくぐり、再び夕刻の重苦しい大気が私たちを包み込んだ瞬間、私はお母さんの背中に向かって声を絞り出す。


「これから友達と会う約束ができたから、先に帰ってて」


その言葉に彼女は足を止めず、わずかに首だけを傾げた。


「……ほんと、勝手な子」


振り返ることもなく放たれた声は、どこまでも希薄で、何の感情も含まれていない。


それだけを告げると、お母さんは情を一切排した速度で、駐車スペースへと歩み去っていった。
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