One year left -家族ごっこ-
彼の胸に顔を埋めたまま、私は渇いた声を細く絞り出した。


「……碧くん、二人きりになれるところに行きたい」


どこでもよかった。


二人だけの世界へ、逃げたかった。


碧くんは私の髪に顎を乗せたまま、低く短い息を吐き出す。


「いいよ」


彼は自転車のハンドルを握り直すと、私を後ろに乗せて、その大きな身体でペダルを踏み出した。


私はただ、彼の広い背中に力なく額を預け、衣服越しに伝わる体温を、意思を失った器のような身体で受け止めることしかできない。


広い駐輪場を抜け、日曜日の濁った街並みを滑るように進んでいく。


やがて自転車が止まったのは、大通りから一本入った、きらびやかでいてどこか退廃的な気配の漂う路地裏だった。


外の世界を完全に遮断するための建物が、静かに私たちを迎える。


彼は無人の受付を済ませ、私を促すようにして薄暗い廊下を進んだ。


重い扉を開けた先には、日常から切り離された広いベッドと、密室特有の甘く乾いた匂いが満ちている。


鍵が閉まる鈍い音が響いた瞬間、私たちはついに、誰の目にも触れない本当の二人きりになった。
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