One year left -家族ごっこ-
私の心の奥底はすっかり冷え切っていて、どこを見つめていいのかも分からない。


この身体は、ただの抜け殻のようだった。


「……なにか、飲む?」


耳に届いた碧くんの声は静かで、私は首をほんの少しだけ動かす。


視線を落としたままでいると、彼が部屋の隅にある小さな冷蔵庫を開ける気配がした。


しゃがみ込んだ彼の広い背中が、薄暗い部屋のなかに大きな影を作っている。


私は吸い寄せられるように歩み寄り、その背中に後ろから自分の重みをそっとあずけた。


彼の肩越しに、ひんやりとした冷気のあふれる庫内を覗き込む。


「……何があるの?」


「麦茶、ポカリ、炭酸……」


「水でいい」


「水ならタダだよ」


碧くんは手前にあった透明なボトルを抜いて私に手渡してくれる。


「……詳しいね」


「俺も水でいいや」


彼は私の皮肉を優しく受け止めると、冷たくなった私の手を引き、ソファへと連れていってくれた。


並んで腰を下ろしたとき、碧くんがボトルのキャップを指先で軽やかに回して、私に差し出す。


私はそのプラスチックの器をうつろな瞳で見つめながら、ただ小さく唇を開けた。


私の心のなさを分かってくれたように、彼は大きな手でボトルを持ち直し、私の口元へと傾けてくれる。


冷たい液体が、抵抗もしない喉を滑らかに通り抜けていった。


唇の端からあふれた数滴が、顎を伝って服に染みていくけれど、今の私にはそれすらどうでもよかった。
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