One year left -家族ごっこ-
私は意思を持たないまま、もう一口、透明な液体を口に含んだ。


そのまま碧くんの太腿を跨(また)ぐようにして彼の膝の上に乗り、その端正な顔を両手で包み込む。


驚きに揺れる彼の瞳を見つめる間もなく、私はその唇を塞いだ。


私のなかに満ちていた冷たさが、碧くんの濃密な口内のなかへ、澱(よど)みなく注ぎ込まれていく。


私の死にかけた冷たさを、彼の強い体温のなかに溶かしてみたかった。


私は彼の熱を帯びた舌に、自分の冷え切った舌を重ね、深く絡ませていく。


彼からボトルをそっと奪い取り、もう一度、透明な水を口に含んだ。


拒むことをしない彼の唇を再び塞ぎ、二度目の水を彼の喉の奥へと流し込む。


碧くんが私の差し出す温度のなさを、一滴も零さずに飲み干していくのが分かった。


注ぎ込んだ水と、互いの息を完全に混ぜ合わせるように、私は彼の脈打つ舌に何度も自分の舌を絡ませる。 


あんなに熱かった彼の口内が、私と同じ冷たさへと染まっていく。


その冷たさだけが、私が今ここに生きているという、唯一の証拠だった。


すっかり空になったボトルが手から滑り落ちる。


カサリ、と乾いた音が、静まり返った密室にひそやかに響いて消えた。
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