One year left -家族ごっこ-
『んー、ちょっと待って』


スマホの向こうで、希歩たちのキャアキャアとはしゃぐ声が少しずつ遠ざかっていく。


夕紗が碧くんたちの輪から少し離れた場所に移動してくれたようだった。


『ってゆうか、合月碧の友達に遊びに誘われた。希歩も凛もめっちゃノリ気。これからみんなでカラオケかファミレス行こうって話になってる』


「嘘でしょ……碧くんも来るの?」


『特に何も言わないから、来るんじゃないかな』


「やだやだやだ。私は行かない」


拒絶反応で即座に拒む私に、夕紗が低く落ち着いた声で告げた。


『逆に、合月くんに口止めするチャンスだよ?』


その言葉が、パニックを起こしていた脳に冷水を浴びせかけた。


そうだ、夕紗の言う通りだ。


碧くんに知られてしまった以上、もうお母さんに永遠に隠し通すことはできない。


何かの拍子に、彼の気まぐれでバラされたら本当に終わりだ。


だったら、最悪の事態になる前に、せめて自分の口からお母さんに伝える時間を稼がなきゃいけない。


そのためには、今ここで碧くんの口を塞ぐしかないんだ。


「今、戻るね……」


決心はしたものの、気が重すぎて声が消えそうだった。


『え?』


「今、戻るから待っててね……」


『大丈夫?』


夕紗の心配そうな気配りを遮るように、自分を奮い立たせる言葉を繋ぐ。


「うん。碧くんに口止めする」
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