One year left -家族ごっこ-
ぽつんと置かれた木製のベンチに並んで腰を下ろす。


「懐かしい。ここで初めて、キスしたよね」


「萩花に思い切り押されて、俺は後ろにコケた」


「碧くんが私のことを馬鹿にしたからだよ」


お互いの顔を見合わせると、小さく笑い声が溢れ出した。


あの張り詰めていた頃の空気はもうない。


私は吸い寄せられるように上体を傾け、彼の唇に触れるだけのキスをした。


ささやかな熱が離れた瞬間、碧くんの琥珀色の瞳が静かに揺れる。


それを見つめながら、彼の大きな手を引いて、敷地の真ん中にある街灯の下へと歩みを進める。


「ここで一緒に、線香花火をしたね」


「綺麗だった」


頭上から、心地よい声が降ってくる。


「この短い命の中で、萩花はどんな火花を散らす?」


「……俺の言った言葉だな」


「今も、もの凄く鮮明に覚えてるよ」


街灯の白い光に照らされながら、彼の瞳を見上げた。


「冬に、年に一度の大きなダンスイベントがあるの。……私、そのオーディションを受ける」
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