One year left -家族ごっこ-
もうすぐ深夜の零時を告げる静寂が、部屋の中を満たしていた。


けれど冴え渡った意識は私をベッドに留めてはくれない。


どうしても今日のうちに進路の決意を伝えたいという衝動だけが、彼の元へと導いていた。


音を立てないように廊下を進み、碧くんの部屋の扉の前で立ち止まった。


暗がりのなかで、その木目を静かにノックする。


待つほどもなく、内側から鍵の外れる音が響き、ゆっくり扉が開いた。


「――どうした?」


部屋の薄暗い光に浮かび上がる低い声が、耳元を優しく掠める。


扉の隙間から覗く碧くんの姿を捉えた瞬間、彼を部屋の奥へと押し戻すようにして、その密室へと滑り込んだ。


静かに扉を閉め、鍵のつまみを一気に回転させる。


「なに?そんなに必死に鍵までかけて。夜這いでもしにきた?」


碧くんはわずかに片眉を上げて、意地悪に唇の端を小さく持ち上げてみせる。


「……違うよ」


私の必死な様子を見つめたあと、ふっと息を漏らして部屋の奥へと歩き、そこにあるベッドへと無造作に腰を下ろした。


「違うんだ。残念」


見上げる瞳が、楽しげに細められる。
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