One year left -家族ごっこ-
「サイゼリヤ行くことになったけど、大丈夫?」


夕紗が周囲に聞こえないくらいの小声で、気遣うように耳打ちしてきた。


「うん……」


頷きながらも、私の視線はせわしなく泳いでいた。


どこで碧くんに切り出せばいいんだろう。


周りの目を気にしながら、声をかけるタイミングを必死に計る。


早く口止めをして、スッキリしてしまいたかった。


だけど、希歩も凛も碧くんの周りをがっちりキープしていて、彼が一人になる隙なんて全くない。 


そんな焦りを察して、夕紗が助け舟を出してくれた。


「ちょうど男女4人ずつで、うちら自転車だから、二人乗りで行かない?」


夕紗の提案に、二人が即座に飛びつく。


「じゃあ私、合月碧くんの後ろに乗りたい!」


「ずるい、私も合月くんがいい!」


予想通りの取り合いを、夕紗がすかさずシャットアウトした。


「ごめん、今日は萩花の自転車に合月くん乗るから。もう決まり」


夕紗が有無を言わせぬ口調で、二人を碧くんから強制的に引き離す。


「なんでぇ?」


「合月くんと仲良しなの?」


二人の視線が突き刺さる。


それに耐えながら、消え入りそうな声で言葉を紡いだ。


「碧くんに、ちょっと話したいことがあって……」


「あ、そういうこと! わかった!」


「じゃあ次に乗るときは私ね!」


二人は、意外なほどすんなり納得して、今度は楽しそうにジャンケンで他の男の子とのペアを決め始めた。
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