One year left -家族ごっこ-
意を決して碧くんに近づく。


「私の自転車に乗ってくれる?」


「いいけど」


「ありがとう」


彼のほうにハンドルを向けると、サドルじゃなくて後ろの荷台をまたいだ。


「あんたがこいでよ」


「……わかった」


この大男を後ろに乗せて走るなんて無謀に近い。


そう思ったけれど、二人きりで話せるタイミングが作れるなら、そんなことはどうでもよかった。


「んじゃ、サイゼ集合で!」


夕紗たちは早々に男の子たちにペダルをこいでもらい、先へと進んでいく。


それを横目に、私は碧くんの重みにハンドルを取られ、バランスを崩して一向に前へ進めないままでいた。


「早くしないと、置いていかれたよ」


後ろからの憎まれ口に、反応する余裕なんてない。


自転車をこぐのを諦め、両足をアスファルトにつけた。


「碧くん、……私もダンススクールに通ってること、聞いたよね?」


振り返る勇気はなくて、前を向いたまま声を絞り出す。


「それがどうかした?」


「あのね、」


一呼吸、置く。


心臓がドクドクと不快な音を立てて、胸が痛い。


「お母さんに、黙っててほしいの」


「なんで?」


「高校一年の時から、内緒でダンススクールに通ってるの。でも……ちゃんとお母さんには言うことにしたから。だから、私の口から伝えるまで、黙ってて」


碧くんは、簡単にいいよって言うと思った。


彼は基本的に、他人の事情に深入りしない、無関心なタイプのはずだから。
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