One year left -家族ごっこ-
荷台にいる碧くんが不意に長い身体を屈め、私の背中を覆うようにして顔を近づけてきた。


「あんたは、俺にお願いばかりだな」


低い声が、耳元を這う。


あまりの生々しさにゾッとして、弾かれたようにサドルから腰を浮かせた。


「ごめん。これが最後だから」


今すぐ自転車を放り出して逃げ出したい衝動を必死に押し殺し、碧くんを振り返った。


「いつも表では母親の機嫌とって、裏では隠し事してるの?」


心臓が、冷たく跳ね上がった。


弱い部分を素手で掴まれ、むしり取られたかのような衝撃だった。


「……そうだよ」


じわじわと広がる痛みに耐えながら、消え入りそうな声で認める。


「お母さんを幸せにするのが私の役目なの。だからダンスをやりたいなんて、自分のための我が儘を言えるわけなかった……」


夕紗にもこんな胸の内を話したことないのに。


それなのになぜ、碧くんにはこんなにも簡単に本音が引きずり出されてしまうんだろう。


自分の脆さが酷く情けなくて、私はただ、夕闇の迫る地面を見つめてうなだれた。
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