One year left -家族ごっこ-
「嫌」


「なんで?」


「恥ずかしいから無理」


「ダンスなんて、人に見せるために踊るものだろ?」


「そうかもしれないけど、私は自分のために踊ってるから……」


再び「無理」と言い切るより早く、碧くんがその上から残酷なまでに綺麗な声をかぶせてきた。


「だったら、俺のために踊ってみてよ」


彼は少しだけ片眉を上げ、獲物を追い詰めた猛獣のように、余裕たっぷりの笑みを唇に浮かべる。


「……それって、交換条件?」


「まあ、そういうことだな」


お母さんに秘密を守ってもらう代わりに、碧くんの前で踊る。


天秤にかけるまでもなかった。


私は何も言わずに、碧くんに自転車を押しつけた。


彼は黙ってハンドルを受け取ると、そこに両肘をついて悠長に私を眺め始める。


こちらの張り裂けそうな気も知らないで、どこまでも退屈そうに。


「曲流すから待ってて」


激しい心臓の音を手のひらで押さえつけてから、震える指先で画面をスクロールした。
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