One year left -家族ごっこ-
そして、深く、長く息を吸い込み、正面から碧くんを見据えた。


彼にとっては、ダンスも私をからかう一つの材料になるんだろう。


そう割り切ってしまえば、不思議なほどすんなりと踏ん切りがついた。


スマホから流れる重い低音が夕暮れの空気を震わせ、鼓膜を叩いた瞬間。


私の身体は意思とは関係なく、勝手に、そして鋭く連動するように動き出していた。


さっきまで胸を焦がしていた羞恥心なんて、もう跡形もない。


オーバーサイズのトップスの裾をわざと大きく揺らし、地面に向かってボーイッシュに、だけどどこか弾むように深く沈み込んでも、軸がブレることは一ミリもなかった。


頭のてっぺんから足の裏までに一本のしなやかな芯が通っているような、不思議な全能感。


刻まれる細かいリズムの粒を、小気味いいステップで正確に拾い上げていく。


空気をピタリと凍らせるような急停止から一転し、今度は粘度の高い液体のように、首から胸、腰へと滑らかな波が伝わっていく。


どろりと溶け落ちていくようなその全身のうねりを受け止め、その反動を鋭い推進力に変えて、今度は硬いアスファルトを力強く引っ掻くような、複雑に交差する足元のステップへと繋げていった。


靴底がざらついた地面を擦り、西日を浴びてオレンジに透ける桜の花びらを小悪魔的に弾き飛ばす。


冷たい夕風にさらされた肌の表面とは違う、純度の高い拍動の波が、私の爪先から全身の皮膚を一気に駆け抜けていく。


最後の重低音に合わせて乱れた髪を首を傾げて無造作に掻き上げ、最後はあどけなさを残したまま肩の力を抜いて、わざと気だるげな余韻を残してみせた。


視線は、一度だって碧くんから逸らさなかった。


今の私のなかには、醜い焦りではなく、純粋な一途さが静かな確信となって鋭く脈打っている。


お母さんに、正直に打ち明けよう。


嘘をついていてごめんなさい。


私はこんなにも、ダンスが好きなんだって。
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