One year left -家族ごっこ-
切れた息を優しく整えながら、碧くんの元へと歩み寄った。


「……約束、ちゃんと守ってね」


念を押すように告げたけれど、聞こえているのかいないのか、瞬き一つせずに、ただ私をじっと見つめたまま、微動だにしない。


「行こう、みんな待ってる」


張り詰めた沈黙に耐えかねて、ハンドルに手を伸ばす。


ほんの一瞬の間を置いて、彼が低く呟いた。


「俺が漕ぐ」


「いいの?」


「どうせあんた、俺を乗せて漕げないから」


「そうだったね」


私は素直に引いて、後ろの荷台に腰を下ろした。


だけど、いざ走り出そうとすると、碧くんの身体のどこを掴めばいいのか分からなくなる。


迷った挙句、彼が着ている制服のカーディガンの端を、指先でちょこんと握った。


「それ、落ちるよ」


前を向いたまま、碧くんが呆れたように言う。


「うん」


怒られるよりはマシかと思い、諦めて彼の引き締まったお腹のあたりに、遠慮がちに腕を回した。


私の体重など初めから存在しないかのように、自転車は滑らかに速度を上げる。


坂道の登りさえ、彼は息を乱すこともなく、ただ静かにペダルをこぎ進めて上りきっていった。
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