One year left -家族ごっこ-
そして目の前の人物に、はっと息を飲んだ。


いつの間にか碧くんが立っていたから。


「……ごめん、電話してて気づかなかった。早かったね。帰ってきてくれてありがとう」


なにも言わない彼の、白っぽい髪がふわりと風に揺れた。


ぼんやりとした外灯の近くで、その端正な顔立ちには、はっきりとした影が落ちている。


自分より年下には到底見えないほどに、大人の男の人に見えた。 


「……じゃあ、帰ろっか」


私がベンチから立ち上がると、反対に碧くんがドカリと座る。 


「疲れた。ちょっと休む」


心なしか息が上がってるようだった。


もしかしたら急いで来てくれたのかもしれない。


彼はカーディガンの両ポケットから缶コーヒーとミルクティーを取り出して、私に差し出す。
< 57 / 143 >

この作品をシェア

pagetop