One year left -家族ごっこ-
「俺があんたの電話に出ないと思った?」


「え?」


「おおかた、母親に嘘つくためにわざわざ外に出たんだろ」


「どういう意味……」


「俺が外泊する、とか?」


碧くんがふっと、意地の悪い笑みを浮かべる。


まるで私の考えていたことなんて、すべてお見通しだと言わんばかりに。


浅い計算の裏を鋭く突かれて、言葉が詰まる。


私だって好きでお母さんに嘘をつこうとしたわけじゃない。


納得させるためには、それが最善の方法だと思ったからなのに。


「……碧くんが、お母さんの電話を無視しなければ良かっただけじゃん」


反論すると、彼は悪びれもせずに缶コーヒーを口にした。


「ああ、気づかなかった」


「だったら、今日みたいに帰りが遅くなったり、もし外泊する日は、お母さんに一言だけでいいから連絡してくれない?」


指先はいつの間にか冷え切り、空になったボトルを握る手に、かすかな強張りが戻っていた。
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