One year left -家族ごっこ-
「なんで?」 


碧くんが煽るような仕草で首を傾げる。


「連絡さえすれば、きっとお母さんは安心するから。そしたら、もう二度と私に電話されなくて済むよ」 


少し吐き捨てるように言った。


今後も何かあるたびに、私が間に入って連絡するなんて、彼にとっても迷惑に決まっている。


けれどその瞬間、碧くんが急にベンチから立ち上がった。


「嫌だ、……って言ったら?」 


遮られた街灯の光と、大きな身体がもたらす迫力に息が詰まり、思わず後ずさった。


碧くんは眉間にシワを寄せたまま、ひどく不機嫌そうな目をして私を見下ろしている。


……何が、そんなに嫌なのだろう。


お母さんに連絡を入れる行為そのものが嫌なのか、それとも、私に指図されたのが気に入らなかったのだろうか。


答えのない迷路に迷い込んだように思考が震えるなか、脳裏には、さっきのリビングで見たお母さんの悲しげな横顔が悲痛にちらつく。
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