One year left -家族ごっこ-
「どうだかな」


碧くんは更に声を低くした。


「碧くんにだって、迷惑かけたくないから頼んでるだけだよ」 


「それなら断る」  


「……どうして?」 


「俺は迷惑だと思ってない。あんたの母親が勝手に心配してるだけで、俺は帰りたい時に帰るし、帰りたくない時は帰らない」


冷たく突き放すような言葉。


何を言っても、聞く耳を持ってくれない。


それでも、彼に“分かった”の一言を言わせたいと願う私は、あまりに浅はかなんだろうか。


「家族になったんだから、心配だってする。お母さんは優しい人だから、そのくらい碧くんを大切にしたいってことなの。分かってくれない?」


すがるような思いで、必死に説得を試みた。


ただ、本当は同居が間違いだったなんて、そんな風に思いたくないだけなのかもしれない。


「親父との養子縁組を断って、自分だけ他人のままでいるくせに」


冷徹な声が、夜の静寂を鋭く切り裂く。


「家族になったのは、俺の父親とあんたの母親で、俺たちはただ一緒に住んでるだけだって、あんたもそう思ってるんだろ?」


碧くんの言葉が張り詰めていた心の核心を突く。


私は声を失い、冷たい闇の中で、もう何も言い返すことができなくなった。
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