One year left -家族ごっこ-
碧くんはされるがままで、私の手を振り払うこともなく、まるでさっきとは別人のように従順だった。


そっと唇に触れるだけのキスに、次第に彼の呼吸が浅くなっていく。


混ざり合う吐息から、かすかにコーヒーの甘い香りがした。


彼の唇が少し開いて私を誘っているのだと気づく。


けれど、その要求に素直に応じるわけなんかなかった。


無視してわざわざ唇をずらした位置に口付けを落とす。


追わせるために、ほんの少しだけ隙き間を作れば、焦れた彼の唇が私を捕らえようとする。


それを巧みに交わしてまた別の場所に唇を寄せると、触れ合う直前の熱い空気のなかで、碧くんの唇が私の輪郭を探っている。


手のひらで転がしているような征服感が胸を満たした。


その瞬間。


視界を遮っていた私の手に、碧くんの大きくて熱い手が重なった。


「……あんたのキスって、こんなものなの?」


手首をがっちりと掴み取られ、有無を言わさず胸元へと引き下げられる。


露わになった彼の顔は、少し不満げに歪んで見えた。


整った骨格が際立つその表情には、息を呑むほどの色気が漂っている。


その美貌に気を取られていると、碧くんのもう片方の大きな手が私の腰を抱き寄せるようにして、服の中へと滑り込んできた。
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