One year left -家族ごっこ-
とっさにその腕を掴み、服の内側で強く押さえ込む。


「触ったら、あなたの負けにするよ」


彼の耳元に唇を寄せ、 冷静な声で牽制(けんせい)した。


「今のは見逃してあげる。……だけど、これはお仕置きね」


耳たぶで鈍く光るシルバーのピアスを避け、その上の柔らかな軟骨に躊躇なく噛み付いた。


少し痛いくらいの強さで、容赦なく歯を立てる。


「……っ、」


碧くんの肩が跳ねて私から逃れようとした。


「痛かった?」


心配するフリをしながら、歯痕の残るそこを慰めるようにして、そっと舐め上げる。


「……それなら、キスした時点で、おまえの勝ちなんじゃないの?」


その降参ともとれる発言が、私を深い優越感で満たしていく。


けれど、ここで引き下がるわけにはいかなかった。


「こんなもの、あなたにとってキスのうちに入らないんでしょ?それなら、まだ勝負は分からないよ」


確実に負けを認めるくらいでなければ、この男は決して信用できない。
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