One year left -家族ごっこ-
「再婚したのに、苗字は変わらないの?」


その問いかけに、思考が一瞬だけ停止する。


彼の視線は、プリントの左端に並ぶ氏名へと落とされていた。


「私の名前、知ってるんですか?」


「小野 萩花でしょ?」


「もうクラスみんなの名前、覚えたんですか」


驚いて尋ねると、彼はペンを回す手を止めた。


「ううん、萩花だけ知ってる」


低く、確信を含んだ声。


どうして、と言葉を返すよりも早く、彼は悪戯っぽく目を細めた。


「俺の友達が、萩花に告ったことあるから」


記憶の底が、かすかに揺れ動く。


そういえば以前、知らない先輩に告白されたことがあった。


すぐに断って、顔も名前も忘れていたけれど、あの人の友達だったんだ。
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