One year left -家族ごっこ-
夜の街灯が落とす光の粒を切り裂くようにして、自転車は速度を上げて進む。


ペダルを漕ぎ進める碧くんの広い背中に向かって、やり場のない怒りをぶつけた。


「どうして、あんなこと言ったの」


「あんなことって?」


彼の声は、前方から夜風に混ざって平然と返ってくる。


そのどこまでも崩れない余裕が、余計に私の神経を逆撫でした。


「彼氏!」


「本当のことだろ?じゃあ、あんたは誰とでもキスするのか?」


背中越しにでも伝わってくる、挑発的な温度。


「……勝負だったでしょ。それに、あなた彼女いるよね?」


「彼女?いないけど」


「そんなにモテるんだから、一人や二人いないとおかしいでしょ」


スクールの前で目撃した、あの女の子たちの熱狂的な興奮。


けれど碧くんは、呆れたように鼻で笑っただけだった。


「そんなの、ただ寄ってくるだけで俺は興味もない」 


冷徹で、あまりにも残酷な本音。


私たちは夜風を全身に浴びながら、サドルの上で言葉の刃を交わし続けた。
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