One year left -家族ごっこ-
「だからって、夕紗たちに誤解されるようなこと言わないでよ」


「事実だろ?」


「そんなわけないでしょ!明日、三人になんて説明すればいいの……」


「俺にしたこと、そのまま言ったら?」


「言えるわけないでしょ!」


感情の昂ぶりに突き動かされ、目の前を塞ぐ広い背中を強く叩いた。


その瞬間に、前を向いたままの碧くんが、ハハッと可笑しそうに声を上げて笑う。


心臓が強く脈打つ。


初めて耳にする、彼の無防備な笑い声。


……また私をからかって遊んでいる。


今度は友達まで巻き込んで、なんてたちの悪い男なんだろう。


「全然、笑えないから……」


その時、唐突に自転車のブレーキが軋み、慣性によって私の身体が碧くんの背中へと押しつけられた。


「……だったら、秘密にすればいいだけだろ?」 


彼がゆっくりと振り返る。


琥珀色の瞳が、街灯の薄い光を集めてゆらゆらと揺れていた。


「降りて」 


その低く、穏やかな響きを持つ声が耳を静かに掠める。


見上げる彼の表情は、すべてを夜の闇のせいにしたくなるほど、ひどく優しく映った。
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