One year left -家族ごっこ-
家まであと少しの、近所のコンビニ。


その手前で、碧くんに自転車を降りてもらった。


「先に帰ってて。私はいつものバイト終わりの時間まで、少し時間を潰してから帰るから」


「どこ行くの?」


「コンビニで立ち読みでもしてようかな」


「俺も行く」


当然のように隣に並ぼうとする彼を、私は手で遮る。


「だめだよ。もう夜遅いし」


「おばさんに電話したら、いいんでしょ?」


碧くんは片手でスマホをフリフリと揺らした。


「そういう問題じゃない。一緒に帰ったら、お母さんに変に思われるからダメ」


「けど、もう電話した」


「いつ?」


「あんたのこと、スタジオの前で待ってる時」


彼は片眉を上げて、得意げに唇の端を吊り上げた。


この子供みたいなドヤ顔。


その顔をほんの少しだけ、可愛いと思ってしまった自分が悔しい。


「……本当に、約束守ってくれるんだね」


「俺が負けたからな」


結局、私たちは並んで歩き出す。 


さっきから、すれ違う女性たちがチラチラと碧くんを盗み見ていることに気づいていた。


暗がりでも、彼の引き締まった長身とシルバーの髪は異質なほど目を引く。 


ふと見上げると、彼はそんな視線など初めから存在しないかのように、ただ真っ直ぐ前を見据えて歩いていた。
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