One year left -家族ごっこ-

【グレー】

翌朝、校舎のガラス扉を押し開けた瞬間、そこにはもう逃げ場なんて用意されていなかった。


私の靴箱の前で、腕を組んで待ち構えている夕紗たちの姿が視界に飛び込んでくる。


「容疑者が来ました!」


「逮捕します!」


登校早々、希歩と凛に両腕をがっしりと掴まれ、周囲の生徒たちから注がれる好奇の視線が、痛いほどこちらへと集まっていった。


「さあ、白状してもらおうか?」 


目の前に立ち塞がった夕紗を前に、希歩と凛がマイクに見立てた拳を、私の口元へと勢いよく突きつけてくる。


「あんなことって、一体何したんですか!?」


「彼氏って本当ですか!?」 


恥ずかしさに顔を背けながら、周囲の目を気にするようにして深くため息をついた。


昨夜の満開の夜桜が、遠い幻のように頭の片隅で揺れている。


「……誤解だよ」


「誤解?」 


三人が同時に目を丸くした瞬間、掴まれていた両腕の力が、わずかに緩んでいった。
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