アングレカム-Angraecum Leonis-

第十四話夏の飲み会〈集う、夏の夕暮れ〉



 ある夏の夕暮れ刻。若い男女数人が集う時間があった。
 数日前に集まって食べ放題にでも行って飲み会をしようという企画が立てられたのだ。

 勿論彼らはまだ高校生かつ未成年である。飲み会と言っても形だけのものでお酒を飲みはしない。
 ただ集まってみんなとはしゃぎたいだけの口実が欲しかっただけなのだ。

 当日食べに行く食べ物はすき焼きに決まり、夏の夕方午後六時過ぎ頃。集いに参加する者達は続々とお店の前にもう既に何人か集まっている中に、ぼちぼちと人は集い始める。

「ほーい! 来たよ! まきちゃんだよ!」

「いえーいまきちゃーん!」

 まきとゆうかがハイタッチをする。

「バケモンが二人揃ったな」

「はぁ?なんやこら」

「りゅうくんきらーい」

「うっせー! こっち向くな! 話しかけんな!」

「ウザ〜」
「てか、話しかけて来たんりゅうくんやん」

 ゆうかは腕組みをしながら軽い溜息を吐く。

「地球外生物が何か言ってやがるぜ」

 りゅうのすけはそう言いながら、相変わらずおちゃらけた絡みをしていた。

「あ、ひなちゃん!やっほー」

「いえい。まきちゃんやっほ。ひなが来たよ」

「ゆうかちゃん、まきちゃん! ひなちゃんも! こんばんは〜」

「あー! さっちゃん!」

「さっちゃーん!」

 まきとゆうかが、さつきと互いに握手する様に絡み合う。
 そこにあきせとかずきが到着する。

「続々と集まってきてるな。てか、りゅうくんが一番最初に来てたんが意外やったわ」

 あきせがそう言いながらりゅうのすけを意外そうに見つめる。

「こいつ気分屋なとこがあるけど、みんなで集まってワイワイすんのは好きだからな。前日までLINEで『行きたくねー』とか、『俺の行かねえから』とかって言ってたくせにこういう時1番最初に来るからな」

「ツンデレかよ」

 あきせがすかさずツッコミを入れる。

「は? そんなんじゃねえし?! てかかずきくん! 俺ら二人の秘密じゃんそれ〜!」

「典型的だよな……」

 りゅうのすけの隣に立っていたひろあきが苦笑しながらそう呟く。

「おーっす! 間に合った?」

「おう、たいちくん。お疲れ。全然まだ大丈夫だよ」

 かずきはそう言いながら、たいちの肩を叩く。

「よかったよかった。いやぁグループLINEでも言ったけど家の用事があって間に合うか不安やってさ。まー、間に合ってよかったわ」

「たいち、家の用事って何してたん?」

「んー? いや普通にじいちゃんと昼飯食べに行って、家族で少し買い物行ってってしてただけやで。買い物行ってたとこが少し遠いとこやってな」

「あー、それで遅刻するかもってなったわけか。なるほどな」

「そうそう、そういうこと」

「……俺が……来たよ……ヌゥー……ン……」

 くうどうは、そう言いながらあきせの肩に顎を置き低い声を出す。

「……おわぁ!? ってくうどうかよ! びっくりさせんな!」

 あきせは身体を震わせて、大きくびっくりする。

「ははははは! いやぁ、どうもどうも」

「お前は相変わらずやな」

 かずきはそう言いながら笑う。

「あれ、くうどうくん、何持ってんの?」

 りゅうのすけは、くうどうの手荷物を見て質問をする。

「お? あぁ、これな。この前ちょっと家族で旅行行って来てな。そのお土産。お菓子なんやけど、デザート系やから焼肉食べた後にどうかなって。渡すついでも兼ねて」

「お、いいねぇー! こいつふざけたやつなんやけど、こういうとこあるから嫌いになれへんのよな」

 あきせがくうどうの土産袋を見て先程のくうどうのふざけに対する嫌気を吹っ飛ばす様に笑う。

「わかるわぁ」

 かずきはそう言い、あきせに同調する。

「おぉ、結構揃ってたな」

「なおちゃーん、お久!」

「おぉ、まきさん今日もべっぴんさんやのぉ」

「よく言うわこの美少女が」

 まきとなおが挨拶がてら互いに互いを褒め合いながら、笑い合う。

「うるせえどっちもブスだろ」

 りゅうのすけが二人に対して嫌味なツッコミを入れる。

「うるさ〜。なんやねんこのクソイケメン

「イケメンじゃねぇわ」

「りゅうくん、イケメンの自覚無かったん……」

 なおがまきとりゅうのすけのやり取りから、りゅうのすけの態度に呆れる。

「うわ、結構集まってんな……すんませーん、少し遅れました〜」

「お、せいやくん。まだ大丈夫だよ」

 かずきはそう言いながらせいやにフォローを入れる。

「遅れたから土下座な」

 りゅうのすけはそう言いながらせいやに指示を仰ぐ。

「いや! 本当に! ごめんなさい!」

 せいやはそう言いながら悪ノリに答え、その場に座り込み、本当に土下座する。

「いや、本当にしなくていいから!」

 あきせが間髪入れずにツッコミを入れる。

「みんな〜〜、お久ーー! って言ってもまだ一週間振りくらい? いや、二週間?」

 まやが手を振りながら登場。

「うへ〜やっと着いた〜」

 続いてさくらが少しくたびれながら登場する。

「まやちゃーん! さくちゃーん!」

 まきはそう言いながら二人に駆け寄る。

「え、ちょっ?! さくちゃん、髪型どうしたん!? めっちゃ可愛いやん!」

 ゆうかがさくらの編み込んだ髪型に感動して、近寄る。

「……ん、なんかお母さんがしてくれたの。別にいいって言ったんだけどさ……」

「そんな事ないよー! 可愛いやん! ねぇ、りゅうくーん?」

 まきはさくらを褒めつつ、りゅうのすけに視線を向けて話を振る。

「なんで俺に振るんだよ」

(……ふむ、この反応は……。この様子やと二人は付き合ってるわけではなさそうなんかな……? あの話はひなちゃんとの秘密にしててよかったみたいですな……)

 まきは二人の様子から関係性を勝手に推察する。

「い、いやぁ、近くにおったからさぁー」

 ほとんど棒読みなセリフを吐きつつ、りゅうのすけの表情を覗く。

「ふーん。まぁでも、似合ってんじゃん?」

「……えっ、あ、うん。ありがとう……」

(……んんっ!? りゅうくん?! さくちゃん?! もしや? もしやもしやもしや?! もしかしてなんですかーー!!)

 まきは二人の対応と反応を見て、勝手にあたふたする。

「あれ、もうみんなおるやーん! もう、りゅう〜置いてかんといてや! 一緒に行こう行ったやん!」

 みうが合流し、りゅうのすけに駆け寄り、拗ねた顔を見せる。

「うるせえ知るかクズ。遅れてくんなよ」

「あはは。りゅうくん相変わらずだね」

「おう、はるかちゃん。今来たの? 久しぶりじゃん」

「なにこの対応の差〜! ひどない!?」

(……もしや……いや、まぁ、でも……うん。私は知ーらないっと)

 まきはそうして思考を放り出した。
 すると少し離れた所から駆け足でやって来る人影が見える。

「あ、もうこんなに集まってる! ごめんごめん! 勉強してたら時間ギリギリになってしまって」

 るいだ。

「るいくんのほっぺたムニムニの刑で許してやろう。ムニムニ〜」

「ほごほご。ちょ、りゅうくん、やめっ、ほごほご」

「るいが小動物にしか見えへんな。ちょい小柄やから余計に」

 あきせはそう言い苦笑する。

「いや、ほんまに。りゅうくんが背高いのもあるけど」

 ひろあきもあきせに同調し苦笑する。

「うっす!」

「おー! せいじくん来たか! この前のゲーセン以来やな」

「いや、ほんまに。かずきくんと普段そんな遊ぶ事ないから今日楽しみやったわ」

「俺も俺も」

「なに!? かずきくん浮気!?」

「浮気も何も誰とも付き合ってねえし、そもそもせいじくんともお前ともなんもねーよ」
 
「私とは……遊びだったの……」

「もういいもういい」

「ははは! りゅうくん、後で荒野しよや」

「お! いいよ! せいじくん強いからなぁ」

「よし、そろそろみんな揃ったな! そろぼち入るよー!」

 かずきは皆に声を掛けて取り仕切る。

「はーい!」

 全員一斉に返事をしてかずきの後に続く。
 そんなこんなで男女総勢十八人が集い、すき焼きを食べに店内へと入る。店員さんに大人数で入れる個室へと案内され、適当な席へと着く。

 適当な注文をして、各々はドリンクバーに飲み物を入れに行く。
 ふざけて飲み物を混ぜる者、好きな飲み物を入れる者、ノリで合わせる者多種多様に居ながら、ドリンクバーだけで盛り上がり、全員が戻ってきたところでりゅうのすけとくうどうの適当な乾杯の合図で、飲み会はスタートする。

「それではお集まりの皆様。わたくし、くうどうめが、乾杯の音頭をとりたいと思いまする。」

「いいゾォ! いいゾォ〜!」

 りゅうのすけがくうどうを煽ると周りが笑い出す。

「はぁ〜!」

 くうどうが気合を込める様に深呼吸をする。

「カンパーイ!!」

 りゅうのすけがすかさずにコップを持ち上げ乾杯の音頭を取る。

「カンパーイ!!!!」

 それに合わせて皆が乾杯をする。

「いや、おい! りゅうのすけ! お前が仕切るんかい!!」

 くうどうが間髪入れず盛大にツッコミを入れる。

「あはは!!」

「あっはっは! ははははは!」

「ちょっ、今の流れおもろ過ぎ……!」

 皆の笑い声と共に若者の宴会が始まりを告げた。
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