アングレカム-Angraecum Leonis-
第十七話夏の熱中症
ある日の出来事。花火大会もあと少し、と言った今日この頃。なおは暇つぶしに外を散歩していた。
花火大会、自分のデザインした花火が打ち上げられる楽しみにルンルンしていると、当日が楽しみ過ぎて、嫌という程待ち遠しかった。
夏の昼間という事もあって、とてつもなく暑いが、なおは空を見上げて今日もいい天気だ、なんて呑気に言いながらにこやかな笑顔で適当な道を歩いている。
しばらく歩いていると、目の前がザーッとテレビの砂嵐の様な映像が流れ出す。
するとなおはクラっとして、その場に倒れ込んだ。
汗をダラダラと垂れ流し、長い間水分を補給していなかったため、熱中症になり掛けてしまったようだ。
このままだと危険だ。なおはどんどん薄くなる視覚の中、目の前を見つめ、頭痛と闘いながらもなんとかして立ち上がろうとする。しかし力が入らない。息も荒くなり、意識も朦朧として来る。
すると、力を入れていないのに身体がスッと立ち上がった。誰かに持ち上げられたようだ。そのまま背におぶられながら、なおはその人から香られる匂いに安心して眠ってしまった。
しばらくして気がつき、目を覚ます。
目の前に広がる景色にはショッピングモールの子供がブロックなどで遊ぶコーナーが見えた。その近くにあるソファにてなおは眠りについていたようだ。
脇と首と手首やおでこが冷たい。見てみると、凍ったお茶が両脇に挟まれており、手首やおでこには冷えピタ。首には濡れタオルがあった。
疑問符を浮かべながら、起き上がると男性が近付いて来て、なおに声をかけてきた。
その男性はかずきだった。
「お、なおちゃん起きた? ほらアクエリ。いやぁ、近くにショッピングモールがあって助かったわ。クーラーガンガン聞いてるし、色々買い揃える事出来たし」
「……?」
渡されたアクエリアスを持ちながら、現状を把握出来ないまま、なおは困惑しな顔でかずきを見る。
「なおちゃん、熱中症で倒れてたんだよ」
「へ? あ、そうなの? あ、そっか、そうなんだ……えっとごめんなさい……迷惑かけてしまって……」
「いいよいいよ! 謝んないでよ。もしかしたらこのまま熱中症で倒れて亡くなってたかも知れなかったし、俺は助けられて本当に良かったと思ってるから」
「……ごめんなさい……このお金とか後で払います……」
「いい! いい! 気にしなくていいから! ほら、頭痛とかもう落ち着いてきた?」
「うん、もう平気」
「そっかー、よかったー。とりあえずもう少し涼んで行こっか」
「……あ! ……あの……か、かずきさん……そ、その……あ、ありがとうございます……」
「うん、いいよ」
貰ったアクエリアスのフタを手を震わせながら開けて、気が付いたら涙を流しながら、なおはアクエリアスをゆっくりと一口ずつ口に含みながら飲んだ。
自分の不甲斐なさと、熱中症で倒れた事へと注意不足、迷惑をかけてしまった事、そして何よりもかずきの優しさに触れてなおは無意識のうちに涙を流していた。
かずきはそんななおを見ながら、背中を撫でて、なおを落ち着かせてあげた。
なおは気持ちを落ち着かせた後、再度かずきへ謝罪とお礼を述べた。