アングレカム-Angraecum Leonis-
花火大会編

第一話花火大会直前




 花火大会も目前となったとある日。女子勢の何人かはまきの家に集まってどんな浴衣を着て来るのかで話が盛り上がっている。

「ゆうかちゃんどんな浴衣着るの?」

「うちはなぁ、一昨年着たやつかなあ。去年お父さんの実家の方に帰ってて花火大会行きそびれたから去年行ってへんから今年は着たいし、行きたいねん」

「そう言えば去年ゆうかちゃん見なかったなぁ」

「そうそう〜〜。ほんま行きたかったわぁ〜」

「さくらも去年は行ってないな。家から花火見れるからそれで満足してた」
 
「なんやそのベストな位置にある家は。もうみんなでさくちゃん家に集まって談笑しながら花火見たらええんちゃう?」

「いやいや! なおちゃん! あかんあかん。どうせみんなで見るんやったら河川敷とかで見なあかんて。それにこのメンバーで揃ったら近所迷惑間違い無しや」

 ひなはそう言いながらコーラをビールみたいに飲む。

「くぅ! やっぱこれだねぇ!」

「ひなちゃん、それコーラやんな……。と、とりあえず! ひなちゃんの言う通りで近所迷惑は間違いない。家で見るのもいいけど、みうは外でみんなで集まって見たいかな」

「うちも。てか、家で浴衣で集まるとかシュール過ぎん?」

 はるかは笑いながらそう言い、ポテトチップを食べる。

「いや、言えてる。ははは!」

 ゆうかは現場を想像して腹を抱え、笑う。

「幼稚園とか小学校低学年くらいやとええやろけどなあ〜〜。もう高校生やと外で集まった方がええやろな」

 まきはそう言い、ジュースを飲む。

「やなぁー。屋台とかは何人かの少人数で分かれて回って、花火見る時集合するとか?」

 さつきがそう提案する。

「人数多いし、その方が良いかも」

 さくらが同調する。

「せやねぇ。いくらなんでも大人数でゾロゾロ回ってたら絶対何人かはぐれるだろうし」

 まやはなおの方を見つめながらニヤリと笑う。

「はいどうも。よくはぐれる人です!」

 なおは片手を天に掲げる様に挙げて真面目そうに皆の顔を見つめる。

「自慢気に言う事ちゃう」

 まきがすかさずツッコミを入れる。

「キャハ!」

 なおは片目を閉じ、下を出す。

「みうちゃんは少し場所の離れたところで別行動とか?」

 ひなは、ポッキーをつまみ、みうに差し向けながらそう言う。
 
「え、なんで?」

「この前の練習、忘れたとは言わせへんで? ほら、頑張ってきーや?」

「……う、うん。ありがとうさとみ」

「……私はいつでも、恋する乙女の味方やから、な?」

 そう言いながらひなはポッキーをひと齧りしてドヤ顔。

 「ひなちゃ〜〜ん!!」

 まきがひなに勢い良く抱きつく。

「イケメン過ぎて泣ける」

 ゆうかはそう言いながらクッキーを食す。

「こぉら? まきこ? ひなのことは?」

「うん、ごめん。さとみやったね!」

「ところで、浴衣の話どこ行った?」

 なおが冷静に話を戻す。

「んー、やっぱみんな当日までの楽しみにしようよ」

  まきがそう提案する。

「うん、その方がよろしいかもな」

「うん! さくらも楽しみ!」

「みんなで写真撮ろな〜〜?」

「ゆうかちゃん? ……それありぃ〜〜」

「やんなぁ、ひなちゃんも撮ろうなぁ」

「うちも撮りたい!」

「はるかちゃんも勿論やで〜〜」

「いいやん! それはめちゃくちゃ楽しみ! みうは今年どんな浴衣にしようかなぁ……」

 各々適当な談笑をしつつ、まきの母が出してくれたお菓子を食べつつ、夕方までの時間を適当に楽しく過ごした。

 そうして、解散の時間はすぐに訪れる。
 彼女らはまきの家の前で花火大会に再会をする事を約束してその日を終わらせる。

 しばらくしてさくらが一人で帰宅路についていた時だった。後ろからみうから声をかけられた。

「さくちゃん」

「え? あぁ、みうちゃん? え、どしたの?」
 
「わたし、りゅうに告白するから」

(え、なんでそんな事さくらに報告すんの? 意味分かんないんだけど)

 さくらは戸惑いながらも返答をする。

「……へ、へえ……そう……が、頑張ってね……?」

「……自分はりゅうに好意を抱かれてるって勘違いしてるから余裕なのかしらね。大丈夫。りゅうは暇つぶしに誰かしらに声をかけて遊ぶ人だから」

「は、はあ……そ、そうなんだ……?」

「さくちゃんの一方的な片想いに終わると思うよ。それじゃ。負けないから」

 そう言いさくらに背を向けてみうは自宅へと帰った。みうの表情そのものは、ミスコンで優勝した事もある程の美人な顔をしているだけあってか、物凄い圧力を感じた。
 その圧力に負けて、さくらはみうに対して何も言い返せずにいる。

「わたしの……カタオモイ……? 負けない……何が……? なんか勝負してたっけ」

 しかしさくらは言葉の意味を理解出来て居なかった。そもそもさくらは片想いをしているなんていう自覚なんて無かったし、りゅうのすけに対する感情なんて自分の中ではすきではあるが、それはあくまでも友達としてのすきである。
 だからこそさくらはみうが何を言っているのかナチュラルに分からない。

  そして負けないと言われても、何の事だか分からずに居た。

 その後歩きながら、みうは何を言っているのだろうかと少し考えたが、考えても分からずに道を歩く。

 まきの家から少しかかる帰宅路の道中、帰宅途中にあるコンビニに立ち寄りながら、考え事を続行。

(……カタオモイ……カタオモイ……硬くて重いの? ん? なんだっけこの言葉どっかで聞いたんだけど、しばらく聞かなかったせいかどういう意味だったが、喉ら辺まで出てるはずなのに出てこない……んー? それに負けないって何の事? 最近なんかみうちゃんと勝負してたっけなぁ……? 覚えてないなぁ……)

 腕を抱えて悩んでいると後ろから声がしたので振り返る。するとその声の主はりゅうのすけだった。

「さ〜くちゃん。おいおい。こんなとこで腕抱えて考え事か?」

「あ、りゅうくんだ」
(……流石にみうちゃんがりゅう君に告白する話は言えないな)

「何考えてたかは知らねーけど、あんまり根詰め過ぎんなよ」

「……う、うん。ありがとう……」

「てか、花火大会の屋台でたこ焼き売ってるとこって何処ら辺かな」
 
「たこ焼き? んー、普通に何店舗か屋台出てると思うなぁ。結構な広範囲でやるらしいし、さくらも毎年行ってるわけじゃないから分かんないや」

「そうなんだ。俺初めてなんだよね。花火大会行くの」

「……え、そうなの?」

「うん。毎年ずっと家でゲームしてたから」

「へ、へぇ〜」

「でも、祭の屋台とかで食うたこ焼きとかってめちゃくちゃ美味いじゃん。お母さんがたまに買って帰ってきてくれる事あってそれは食べた事あるんだけどさ。今回は屋台でその場で食いたいなって」
 
(……この人花火大会自体全く興味無いんじゃ……)

「確か近くの神社でやるんだろ。あの無駄に馬鹿でかい」

「無駄かどうかは分かんないけど、近くの神社でやるよ。そこに連なる河川敷辺りでも屋台とかやってるみたい」

「それなら神社に入らなくても河川敷の方でたこ焼き買えるな」
 
「……食べたらどうするの?」

「んー、考えてないけど。多分ひろあきとかかずきくんと花火見て帰るんじゃない。」

「ヘェ〜、そ、そっか」

(よかった……一応花火は見るみたい。みうちゃん頑張ってね)

「と言うかそろそろ帰らねえと。晩ご飯が待ってる」

「あ、ほんとだね」

 二人はコンビニにて適当な飲み物を買い、そのままコンビニを後にして、外で飲み物を飲みながら歩き始めた。

「さくちゃんの家何処ら辺よ」

「ん、もう近いよ」

「んじゃ、近くまで送ってくわ」

「そんなそんな、悪いよ」

「いいよ。別に。もう結構暗くなってきてるし。夏だからって言っても19時越えたら薄暗くなってくるもんだな」

「うん、そうだね。それに昼間と比べたら全然涼しいね」

「あー、めちゃくちゃ涼しい。花火大会は人混みが多そうだなあ〜……」
「……クソ暑そう……」

「人混み多くなると嫌でも暑くなっちゃうもんね」

「そうそ。そういや、なんかひろあきがデザインした花火が打ち上がるらしくてさ。それ見るために行くんだよ」

「え! そうなの? すごい!」

「あいつとは付き合いが長いし、いつも助けてくれるからよ。こんな時くらい見に行ってやるかなって」

「助けてもらってるの?」

「ん、いやまあ、大したことじゃないよ? 暇な時遊びに誘いに家に来てくれたり、毎朝登校する時、道中で待っててくれて一緒に行ってくれたり。あいつが居ねえと多分不登校になってたかもな?」

「ひろあきくんとそんなに信頼し合ってるんだね」

「普段こんな事恥ずかしくて言えねーけどな」

「そんなもんだって。普段お世話になってる人にお礼を言うタイミングって中々掴めないと思うし。親にだってそうじゃん」

「そうだな。確かに。でも、何か特別な日……例えば誕生日とかがあれば、その時くらい言えるようになれるようしとくよ」

「うん、それでいいと思う。じゃあ、私こっちだから。送ってくれてありがとう! バイバイりゅうくん」

「うん、こっちこそありがとう。バイバイさくちゃん」
< 19 / 59 >

この作品をシェア

pagetop