アングレカム-Angraecum Leonis-
第二話花火大会前日〈さくら〉
日は一刻の猶予も無いかのように、時間が過ぎて行く。明日にでもなれば花火大会が始まるという事で街は賑やかさを徐々に増して行っている。
二日間に及ぶ花火大会は、初日は神社からその通路の如く連なる河川敷までに立ち並ぶ出店が街の人達の気分を盛り上げてくれる。
夕方から夜までに続くこの夏祭りに人々は日々のストレスや疲れを忘れて集って行く。
一日目も二日目も花火が打ち上がるという事で、花火職人達も大忙しと仕事をこなしている。
そうして、花火大会前日の今日は、屋台など出店の準備をする人が昼から夕方までてんやわんやと賑わっている。
祭というものは、日程が近付くに連れて、もう直ぐかと待ち遠しくなり、前日になり準備を始める人々が増えてからやっと花火大会が明日明後日と二日間あるという実感が湧くものである。
その一人であるさくらは1人晩ご飯のお使いを頼まれながら、近くを歩きそう感じる。
「いやぁ、凄いな。もう明日か」
ボォーっとしばらく準備している人々を見つめてさくらは凄いと思うと同時に明日を楽しもうという気持ちを込めて、再度買い物へと足を動かす。
今日の晩ご飯は母の作るカレー。
それもそれで楽しみだと思いながらスーパーへと向かう。
「ママのカレー久し振りだな」
そう呟き、歩く。歩いている最中にある事を思い出す。
それはみうに言われた一言。「一方的な片想いで終わると思う」である。
片想いが何の事かを考え、思い出し、さくらはこう思った。
「……さくらが片想い……誰に?」
イマイチピンと来なかった。さくら自身恋というものをした事が無かったので、まず人を好きになった事すらなかった為、恋愛感情というものがさくらの中でイマイチ分からずに居た。
しかし、あの言葉の指し示す片想いの相手とはどう考えてもりゅうのすけしか居なかった。
何故さくらがりゅうのすけに片想いをしていることになっているのだろう。
さくら自身りゅうのすけの事はすきである。しかしそれはあくまでも友達としてのすき。
恋愛感情で考えた事なんて無かったし、そもそも恋愛感情の好きがわからなかった。
「……んー、まぁなんにしても。みうちゃんの恋が成就してくれたらいいな」
さくらはそう思い、スーパーでの買い物を終わらせて帰宅路を歩く。
明日には待ちに待った花火大会が始まる。どこかで少し男女の関係性が変わってくるかも知れない花火大会。
ただ花火を見るだけで終わる花火大会。
みんなで花火を見て終わる花火大会。
様々な花火大会が待っている。
夜の街に提灯が吊るされ、明日へのざわめきが響く。