アングレカム-Angraecum Leonis-
第三話花火大会前日〈みう〉
花火大会前日の今宵。みうは一人浴衣を見つめて決意を固めていた。
今まで幼馴染としてお互い接してきていたりゅうのすけに花火大会で告白をするために。
一日目でも二日目でも良い。彼を見つけたら想いを告げる。そう心に決めていた。
心の奥底で高鳴る鼓動を抑えながら、綺麗に整った美人な顔を自分で叩く。
「……りゅう……今までずっと一緒に居て、知らない間に貴方を好きになっていました……」
鏡を見つめてみうは独白を続ける。
「……小学生の頃からりゅうはあんまり変わってません。ずっとそのまま。でもちゃんと大人ってなっている。いや、元々大人だったのかもしれません。普段口悪くて、ワガママばっかり言う貴方ですが、そんな口の悪さの中にある優しさや、ワガママの中にある自由さに私は知らず識らずの内に惹かれていたのかも知れません……」
深い深呼吸をして、数秒黙り込む。
「ああ、ダメダメ。こんなんじゃ固い。それならひなちゃんみたいにフランクに告う方がいいかも……」
頰を赤らめながら俯いて考え事を始める。
(……まさかさくちゃんもりゅうの事が好きなんて……いや、りゅうの事が好きな女の子なんて今までも居たやん……今更やん……今までだってりゅうはどんな女の子にも見向きもしなかった……みうでさえ……)
胸が苦しくなり、嗚咽を吐きながらみうは泣き出した。そう、今の今までずっと一緒に居たのに、りゅうのすけはどんな女の子にも見向きをしなかった。付き合ってた女の子は何人か居たのは知ってる。だがどの女の子もりゅうのすけが我慢出来ずに振っている。
自分なら、と思う事は何度でもあった。しかし、今まで告う勇気が無かった。
「さくちゃんに酷い事言っちゃったな……一方的な片想いで終わるかも……なんて。……特大ブーメラン投げたかも知れないのに、何やってんだろ……ダメだな……この感情にはどうしても抗えない……」
コップに入れてあった麦茶を飲みながら、夜空を見上げる。明日と明後日にはあの夜空のキャンバスに花火という炎の絵が打ち上がる。
円の形をした炎の絵を観ながらならちゃんと告えるのかな。なんてそう考えながらみうはまた麦茶を飲んだ。
「……はぁ、やっぱ好きだな。邪魔なようで邪魔じゃないこの感情はやっぱり捨てきれないよ。ごめん、さくちゃん。ひどい事言って。今度会ったらちゃんと謝ろう。ごめんりゅう。こんな私が貴方の事を好きになってしまって」
みうの頰には少し流れの緩やかな川が流れ始める。
それは煌びやかで、美しい夜空の月の下光る宝石のような眩しさがあった。
恋をした乙女はまた一つと美しくなった。