アングレカム-Angraecum Leonis-

第七話花火大会1日目〈集合〉



 花火大会初日の今日、まだ午前中だと言うのに人混みは凄みを増すばかり。

 二日目と比べるとまだまだ少ない方ではあるが、それでも数百人は来ている模様。

 そのほとんどは小中学生の若者がほとんどではある。そこに見える大人達の何人かは花火を打ち上げる際の入念のチェックや会議をひたすらと繰り返している。

 子供達はそんな事を知る由も無く屋台でオモチャを手に入れ、それを使い戦争ゴッコをする小学生や、祭を口実に集まって駄弁ったりしている中学生で溢れかえる。

 何校の小学校、中学校の生徒達が集まっているのかは検討がつかないが、中には校区外で本来は子供だけで来てはならない小学生達や、いくつかの電車を乗り継いで遊びに来ている中学生なんて者達が溢れかえっている。

 そこに徐々に老夫婦や、熟年夫婦も加えられ、午前中だけでもかなりの人数の人々が祭に集って行く。

 そうして時間が過ぎると共にじわじわと増える人々だけでも祭は賑やかさを増して行っている。

 夕刻午後五時頃を迎えたその時、河川敷近くにある公園にて、さくら達は集合していた。

「まきちゃん可愛過ぎませんか?」

「特大ブーメランかよ、さくちゃん……」

「みんな可愛いわぁ」

 ゆうかはさくらとまきのやり取りを見ながら微笑む。

「いやぁ、浴衣で集まんのも新鮮やな」

「普段着ないから余計にね」

 ひなとまやが世間話をするおばちゃんの如く駄弁り出す。

「ほんと、みんな可愛い! ……目の保養」

「はるかちゃんも可愛いよ! あ、さっちゃんの浴衣綺麗やなぁ」

「そうやろ〜! お母さんのお古やねん! みうちゃんも可愛いやん! 色も模様も鮮やか!」

「おぉ、この水色に黄色い花が良い感じにマッチしてるのが良きね」

 なおがさつきに近付き、さつきの浴衣を観察する。

「なおちゃんの黒に紫の花ってのも大人っぽくて好き!」

「ふふふ……よっしゃ! さっちゃんに褒めてもろた〜!」

「男子勢の浴衣はシンプルなデザインやけど、みんな落ち着いてて良いな」

「女子の浴衣とは違った良さがあるよな」

 あきせとたいちは横に並び皆の浴衣を観察する。
 
「いやぁ、俺、浴衣似合い過ぎん?」

「いやほんまに。くうどう、お前普段おちゃらけキャラのクセして実は顔整ってるからな。それにスタイル良いしでなんなん?」

「いや、ネタで言ったからマジで言われると照れるわ。なはは。たいちもかっこええで」

 くうどうは照れ隠しにたいちに絡み出す。

「やめろ、照れるやろ」

「わろた。なんやこいつら」

 あきせが吹き出す。

「せいじもくうどうと同じ感じのスタイルしてるからマジかっこいいわ」

 たいちはくうどうのダル絡みを振り解き、せいじに近付く。

「ほんま? 照れるわ。なはは」

「くうどうの真似せんでよろしい。」

 あきせはツッコミながらせいじの肩を叩く。

「りゅうくん、なんか考え事か?」

 かずきはそう言い、腕を組み考え事をしているりゅうのすけに声を掛ける。

「かずきくんとのデートの構想」

「真面目に聞いた俺がバカやったわ」

「照れるなよ〜〜! んふふ!」

「りゅうくんは相変わらずやな……」

 ひろあきは二人のやり取りを見て苦笑する。

「んあ? なんだこら? 怒るよ怒って良いの? ムフゥ!」

「なんやその腑抜けた笑顔は……」

 苦笑しながら、持っていたお茶を飲む。

「せいやくんは浴衣着ると完全にどっかのチンピラにしか見えへんな」

「るい?! チンピラちゃうわい! 普通の人ですぅ〜〜」

「うち、せいやくんの事ずっとヤンキーかチンピラやと思ってた」

 横からやって来たまきがるいの発言に同調する様にせいやに追い打ちをする。

「うるさいぞ大阪のおばちゃん。お前も浴衣着たらババアにしか見えへんぞ?」

「せいやくん、キラーイ!」

「はーい。キラーイ!」

「キラーイ!」

 るいは二人を見ながら「逆に仲良いなこの二人」とボソリと呟き笑う。

「ゆうかちゃんの髪飾り綺麗だね」

「そー?ありがとう! あ、さくちゃんも! それアンパンマンの髪飾り?」

「あ、うん。そだよ」

「あ、ゆうかちゃんよ髪飾り、ほんま、オシャレやなぁ」

「ちょー、さっちゃんそんな見んといて〜〜! 恥ずかしいやん〜!」

「そ、そんなに見てはないけど……」

「さくちゃんの赤に桜の浴衣も可愛いなぁ。顔も可愛いから余計に」

 まやがさくらの浴衣を褒めながら、容姿も褒める。

「……そ、そんな事ないよ! 可愛くもないし! ……さ、さくらブスだもん……!」

「いやいや、さくちゃんでブスやったらうちどうなんの!?」

 横に居たはるかが、さくらに問う。

「はるちゃんは高身長美人」

「ナイナイ」

「あるある」

「まぁ、みんなそれぞれめっちゃ可愛いと思うけど? でも結局さとみが? 一番美しいん、やけどな……?」

「ウッ! 眩しい! ……ど、どこからか光が……!」

「直視出来ない……美し過ぎるが故に……! これが……逆光……!!」

 まきとゆうかが、ひなの背後の後光に目を瞑る。

「それiPhoneのライトや」

 あきせが冷静にツッコミを入れる。

「よーし、そろそろ、二人組み決めるか。男女で分けるんだっけ?」

「あ、かずき。その前にみんなで写真撮ろうよ」

「あぁ、そうだな。ごめんごめん。ゆうか、ありがと」
 
「どう並ぶ? まきちゃん的には前が良いけど」

「男女に分かれても良いし、それか男女に分かれてから、上は男子、下は女子って感じで分かれる? そこに階段あるし」

「あー、つまり男子が上の段に並んで女子が下の段に並ぶって事? じゃ、ついでにお互い前後ろにペアがおる感じで並ぶか」

 さつきが提案し、あきせが補足する。

「そうそう! あきせくんの補足案も足してそれでええと思う!」

「ほな、そうしよか?」

「その方が後で見た時、この時誰とペアだったとか色々思い出せて良いかもやな」

 かくして彼らはLINEのグループに機能されているあみだくじ機能を使い、適当なペアを作る事となった。

 夏休み前まではもっと少ない人数で集まる予定だったが、飲み会の時や他のメンバーが違うメンバーと遊んだ時に誘ったりやらで結局飲み会に集ったメンバー全員が集まった。

 元々集まるメンツだと男女比が同じにならない、という理由もあったりしたが。

 そうして出来たペアで雰囲気だけカップルのように楽しもうという事でこの案は立証された。

 かくして一分後。あみだくじ機能にて出来たカップルは、以下のこちら。

 さくら、せいじペア。

 なお、かずきペア。

 まき、あきせペア。

 ひな、せいやペア。

 みう、りゅうのすけペア。

 まや、ひろあきペア。

 はるか、たいちペア。

 さつき、るいペア。

 ゆうか、くうどうペア。

 以上のペアに分かれ、本日の花火大会の出店を回る事となった。勿論花火が打ち上がる20時から21時の間は、事前に指定した場所に集合する事となっていた。

 そこは、事前にかずきが知っていた花火がよく見え、周りに人が少ない穴場らしい。

 しかし集合自体は自由となっている。

 もしも二人で見たいとなった場合は二人で見る事の自由を与えたのだ。

 その集合の自由を知っていたみうはりゅうのすけとペアになれた時点で心の中でホッとしつつ、小さくガッツポーズを決めていた。

 公園にある公民館の前にある階段で先程さつきが言った通りに並び、まきが持って来た自撮り棒で集合写真を撮り、各ペアは解散し、それぞれ自由に屋台を回りに向かった。

 そうして彼らの花火大会は、ひと夏の波乱が起きそうな予感を残しながらも、始まりを告げたのだった。
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