アングレカム-Angraecum Leonis-

第十話花火大会1日目〈さくらとせいじ〉




 公園で集合写真を撮り終え、さくらとせいじは2人組みになり屋台へと向かう。

 もう夕方だからなのか。物凄い人混みで溢れかえっている。まだ初日だって言うのに。

 明日の本番になるとまた凄い人混みになりそうだなぁと思いながらさくらとせいじは河川敷を歩く。

「凄い人たちだなぁ」

「これみんな、はぐれずに花火の時に合流出来るかな?」

「なんとかなると思うよ。予め指定した場所があるし。はぐれて時間までに合流出来なかったらそこで落ち合えばいいんじゃないかな」

「あー、なるほどね!」

 二人はそう話しながら河川敷の階段を下る。

 河川敷の下で広がる屋台の一つで、わたあめを購入してそれを美味しそうに食べるさくらは、久し振りの祭を楽しんでいた。

 その近くでせいじはフランクフルトを購入してそれをムシャムシャと食べている。

「人も多いせいか暑いね」

「ほんまになぁー。でもそれがまた良い」

「そうだね。この暑さが無いと花火大会じゃないし」

「暑い中でやるからこそ味が出るんよ」

「そんで、こんな雰囲気の中で食べる屋台の食べ物はどれも美味しい」

「いや、ほんまそれな?」

 適当な会話を楽しみつつ、二人はまた違う屋台へと足を運ぶ。
 まだ少し明るいが、周りの屋台には人がわんさかと賑わって、それぞれの花火大会を楽しんでいる。

 二人で色々と屋台を見ながら、人混みを抜けるようにして次々と屋台を見て、たまに購入したり、しなかったりと歩いて行く。

 さくらはわたあめを食べながら次は何を食べようかと考える。しかしわたあめを食べ切らないと。

 少し食べるのが遅いさくらはいつもより急いだ。わたあめを食べる事だけに集中して、わたあめだけを見つめて食べて行く。

 そうしているとせいじがヨーヨーすくいへと向かって行った。

 さくらはわたあめを食べる事に夢中だったため、それに気付かなかった。
 ふと顔をあげるとせいじがいない。人混みに紛れたせいもあり、せいじを探せなくなったさくらは困惑しながらもせいじに電話をかけようとする。

 しかし出ない。せいじはスマホを持っていたカバンの中に入れたままだった為気付かなかったのだ。

 どうしよう。どうしよう。そう一人で慌てふためく中、二人の男性に声を掛けられた。

「おー、姉ちゃん一人? 良かったら俺らとお祭り回らない?」

「なんか奢るよ」

「え、本当ですか? どうしようかなぁ」
 
「いいじゃんいいじゃん。ほら、一人でいてもつまんないでしょ?」

「そうそう。俺らと花火大会楽しも!」

(……せいじくんどこに行ったか分かんないし……見つかるまでの間この人達と居ようかな……)

「それじゃあ……」

「待て」

 さくらの背後から聞き慣れた声がした。振り向くとそこに居たのは……。
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