アングレカム-Angraecum Leonis-
第十二話花火大会1日目〈はるかとたいち〉
片手にたこ焼き、片手にかき氷を持ちながらたいちは川の近くで座っていた。
その横に居たはるかは、はしまきを食べながらかき氷が落ちそうなたいちを見てにこやかな表情を浮かべている。
「おわっと、ふぅ、あぶな! 落ちよったわ」
「ふふ」
「はるかもどっちか食うか? たこ焼きかかき氷。どっちも半分か少し食べてええよ」
「うーん、ならかき氷少し貰うね」
「おう、食べ食べ。メロン味やけど平気?」
「うん、メロン味好きだよ」
「なら良かった」
一口パクリと食べて、また一口。頭がキーンとくる。それを感じたからか、夏をより感じる気がする。
たこ焼きを食べるたいちを横目に見ながらはるかはふと思った事を口にする。
「たいちくんって、良い人だよね」
「ん? もぐもぐ、んぐっ。なんや急に」
「私って、背高いじゃん。しかも女子にしてはってレベルじゃないやん?」
「んっと、確か173やっけ? 確かに普通の男くらいあるよな」
「そそ。だから、いつも横歩くん嫌がられんねん。でもたいちくんは嫌がらずにずっと楽しそうにしてくれたやん?」
「んー、別に背とか関係なくない? それ言ったら俺やって167〜168くらいって男にしては小さいし」
「それなのに普通に横歩いて、楽しそうにしてくれたでしょ?」
「別に時々集まって仲良くしてるメンツの一人やし、嫌がる理由無いやろ」
「……なら、私があのメンツに居なかったら、横に歩くの嫌だった?」
「んー、はるかは背が高い事よりも、話したら楽しかったり、俺がさっきだって射的とかスーパーボールすくいとかでふざけてても一緒になって笑ってくれたやろ? 俺はそういうとこがええと思うからなぁ。このメンツはあくまでも、はるかと仲良くなれたキッカケに過ぎんから、ここで知り合えてなかったら、横に歩くの嫌とかの前に、そもそも話した事すら無かったかもやん?」
「…………」
「俺は何にしてもこの高校に入って、みんなと知り合えて、その中ではるかと仲良くなれた事は凄く嬉しいと思ってる。そのおかげで今もこうやって楽しくやれてる訳やし」
「私と話してても楽しくないって……」
「なんで?」
「……私人見知りでそんな話すタイプちゃうし……」
「でも俺は楽しいと思ってるよ。ほら、他のみんなだってはるかと一緒に居て楽しいから、話してて楽しいから一緒に居るわけやん?」
「気を遣われてるだけやないかな……」
「そんなん無いって。みんな仲良しやん。俺が見る限りでは、お互いに気を遣ったりしてるやつも、誰かに気を遣ったりしてるやつも居らんよ! 最低限の気遣いはあるやろうけど。でないと、この前の宴会も今回のイベントも集まろうなんかならんし、そもそもそこにはるかも呼ばれてるって事はそういう事やろ?」
「……うん。ありがとう。少し気が楽になった。やっぱたいちくんは良い人だよ」
「そんな事はないよ。俺だって、そういう風に不安になる事あったけど、でもみんなと会いたくなるし、みんなと遊びたくなる。はるかもそうやろ?」
「うん。まきちゃんもゆうかちゃんも、みうちゃんもさくちゃんもさっちゃんもみんな、みんなみんな大好き」
「俺も他のみんなも同じ気持ちやって。でないとこの関係、一年以上も続かへんって! って、早よかき氷食わんとやばいな」
たいちはそう言い急いでガツガツと一気にかき氷を口の中に入れ、頭がキーンとなりながら、嗚咽を漏らす。
それを見てはるかは、笑いながらやっぱりこの人は良い人だ。とそう思いながらまた声を掛けた。
「……なぁ、たいちくん……」
「んー! んー! ……ん? なに?」
「……一緒に花火見よ……」
少し薄暗くなり、辺りはもう少しで夜になりそうな雰囲気をしていて、なんとなく見辛かったが、はるかの顔は赤く火照りながらも笑顔を浮かべていた。
「うん、いいよ!」
たいちは快くそう答え、残りのかき氷を食べた。
その後たこ焼きを食べながら二人でどこで花火を見るかを話しながら、道を歩いた。