アングレカム-Angraecum Leonis-
第十六話花火大会1日目〈ゆうかとくうどう・迷子の発見〉
りんご飴を舐めながら、ゆうかはくうどうが唐揚げを食べたいと言ったのでそのまま唐揚げの屋台へと向かう。
唐揚げを買い、その一つをくうどうが食べていると、泣いている子供がいた。
「おうおう、どうした?」
「ぐすん……ママ……どこ?」
「迷子か。おうおう。とりあえず君……女の子か。名前なんて言うんや?」
「ぐすんぐすん……かんな……」
「おうおう、かんな、やな。オーケーかんな! 俺と一緒にお母さんを探しに行こう!」
「くうどうくん〜? どうしたん?」
「イエスマム隊長。迷子の女の子、かんなちゃんを確保しましたマイマム」
「おお、迷子か。大丈夫? お母さんの名前とかわかる?」
「……ううん、わかんない……」
「そっか。分かった。とりあえずかんなちゃんやっけ、自分で何歳か言える?」
「……え、えっと……いち、に、さん、しー、よ、四ちゃい……!」
「グッ、グァハァッッ……か……可愛い……」
「ほれほれ、とりあえず肩車したるさかい、乗りーや。んでかんなちゃんのお母さん探してみようや」
「……ふぅふぅ……う、うん、そやね。かんなちゃん、お母さんの顔は分かるよね? 今から一緒に探すから、見つけたら教えてね」
「う、うん」
くうどうはかんなを肩車し、ゆうかと三人でかんなの母親を探す為に祭の屋台を彼方此方と駆け回った。
人混みが多い中、背の高いくうどうの肩に乗りながらかんなは幼いながらに母親への会いたさから母親を必死に自分なりに探す。
「……ママ……ママ……」
しかしながら、なかなかに見当たらない。一体何処にいるのだろうか。ここら辺ではないのか?
そう考え、くうどうとゆうかは少し移動する。移動しながら、迷子センターも探す。
しかし、この祭、広過ぎるのと、人混みの所為もあり、一体どこに迷子センターがあるのかどうかが分からない。
それらしきテントさえ見つける事が出来たら良いのだが。
「ほれ〜〜ママどこや〜〜?」
「きゃっきゃっ」
くうどうがふざけながら、かんなの母親の捜索をしているので、かんなは少しずつ泣かなくなり、笑うようになっていた。
しばらく歩いていると、迷子センターらしきテントを見つけてそこに近付くと確かに迷子センターだったようで、くうどうとゆうかは、かんなを迷子センターへと預ける為にその場所へと近付いた。
「すみません。この子迷子みたいで」
「あ、わざわざありがとうございます!」
そのまま係員の人に渡して、くうどうとゆうかは祭へ戻ろうとしたが、かんながくうどうの脚から離れずにいる。
困った様子でゆうかの顔を見るくうどうは、仕方がないと一言呟き、かんなの横に居てやる事に。
「すみません、やっぱり親御さんが見つかるまでの間、この子の側にいます。」
「……その方がよろしいかもですね……」
「ちょーっとお腹減ったな! くうどうくん。うちなんか適当にそこら辺の屋台で食べ物とか買って来るわ」
「おう、頼むわ。金は……これ。俺の財布持って行ってくれ」
「うん、わかった。割り勘で適当に買ってくるわ! ……よしよし、かんなちゃん、お姉ちゃんちょっと買い物行ってくるな? くうどうお兄ちゃんと良い子にして待っとけれる?」
「……ヤダ……ゆーかおねーちゃんも……どっか行っちゃうんでしょ……」
かんなの悲しみを帯びた表情を見て、ゆうかはハッとしてフゥとため息を吐く。
(……そっか……この子はうちらがお母さんみたいに居らんくなるんが嫌なんか……こんな歳でもそんな酷な事考えて……やっぱり寂しいよな……)
「よし、かんなちゃん。なら俺とゆうかお姉ちゃんとで買い物行くか?」
「……え、いいよ?! う、うん! 行く! 行きたい!」
「……って言う事らしいんで。すみません、係員のお兄さん。もしここにかんなちゃんの親御さんが来たらそう説明してもらえますか。そんな長くはならないようにすぐ戻ってくるつもりですけど……」
「うん、分かった。その方が良さそうだしね。任せて。とりあえず放送だけ流したいから、その間だけ待っててくれる?」
「分かりました」
少しして流された放送を聞きながら、くうどうとゆうかは顔を合わせて頷いて、かんなの手を引いて近くの屋台へと買い物へ出かけた。
後ろ姿はまるで親子の姿、そのものに見える気がした。
適当にたこ焼きや唐揚げなどの食べ物やかんなのジュースなどを買い、それを持って迷子センターへと戻る。
本当にすぐに戻って来たのだけれど、未だかんなの親御さんらしき人物は来ていない様子。
「……こりゃ、みんなと花火見る時間に間に合わんかもやな」
「その時はこの子と一緒に花火を見よう」
「うん、せやな。後でうちから連絡しとくわ」
「おう、頼むわ」
一日目の余興の花火が打ち上がり、一時間程した頃、くうどうとゆうかはまだ迷子センターに居た。かんなもまだそこに居た。
くうどうとゆうかの浴衣の袖を掴みながら、どこか悲しそうな表情を浮かべながら、齢四歳の女の子は泣きそうになりながらも、ずっと耐えていた。
くうどうが頭を撫で、ゆうかが背中を撫で、かんなはジンワリと涙を流しながら、夜空に光り広がる一輪の花を見ながら泣いた。
「……あぁああぁあああ……ぐす……ズズゥー…ッ……あぁぁあああ…………ママァアアァァ…………」
この日かんなの母親がかんなを迎えに来る事は無かった。