アングレカム-Angraecum Leonis-

第二十六話花火大会二日目の昼〈初デートへ誘いたい〉



 朝の9時過ぎに目が覚め、夕方まで時間がある中暇だなぁと思いながらたいちは、リビングのテーブルに頬杖をつきながらワイドショーを流し観る。

 ポケ〜ッとした顔で寝惚けながらも昨日あった出来事をふと思い出す。

 花火を見ている最中はるかに告白をされた。

 何故自分なんかに。という考えと、嬉しいという気持ち、そして自分もはるかの事が前々から気になっていたという事実から付き合う事になったのだが、たいちの中でも今起こっている事が本当に現実なのかどうかが怪しくなっていた。

 あれ、本当は夢を見ていたんじゃ――

 公園でみんなで集まった時から、夢だったのでは……。なんて考えながら、そんなわけないか、と自分で自分に対して鼻で笑う。

 はるかに、急遽だが、花火大会までの間遊ばないか?と誘おうかと思い浮かんだ。
 
 だけど、どうやって?
 なんて言えば良いのだろうか。
 普段女の子と遊ぶ事はある事はある。でもそれは友達の集いや、誘われて行く事が多いわけだ。

 自分から誘う事もまぁ、しばしばある。
 だけれど好きな女の子を遊びに誘うのに、なんて言えば良いのか、なんという理由で誘えば良いのか。それが分からず、悩みどころであった。

「暇やし遊ばん? ……うーん、いや連れやないんやぞ……扱いとか、言葉とか考えたりしな、嫌われてまうやろ……」

 腕を組んでなんと送れば良いのかを真剣に考える。

「シンプルに思ってる事を隠すのは失礼かも知れん。いや、でも暇やからってそのまま送るんはな……。言った後にワンクッション挟むか。うーん……会いたくなったとか? 実際会いたいし、こう言うと、暇って言葉が、会いたくなったって言う言葉の照れ隠しに見えるし、ええ感じやろ」

 数秒沈黙し、本当はすぐにでも会いたくて仕方がないから、その時間がもどかしく、暇に感じてしまっているという事に気付く。

 赤面させ、目を軽く泳がせてワイドショーへと顔を向けて、さらに数秒沈黙。

 いざLINEを送ろうとして、文章を打ち終えると、その文章を送ろうとする勇気がたいちには無かった。

 送信ボタンのミリ単位くらいの近さで親指をプルプルと震えさせながら「んーっ!!」と悶える。

 これ、本当に送って良いのか。

 今更になってそう考え、親指が後ほんの数ミリというくらいの近さで止まる。

 付き合っているからと言い、急遽こんな事を送って、嫌われはしないだろうか。
 頭を抱えながら起き上がり「あぁーっ!」と声を出して深呼吸。

 頭をブンブンと横に振り、自分の中の迷いを振り払う。

「今日花火大会行く前に、遊ばない? 暇過ぎるって言うのと会いたくなった」

 そう送り、しばし返事を待つ。

 たった数分程だろうに、何度も何度もチラチラとスマホを見てしまう。早く来ないかと返信を急かしてしまう。本人に直接言うわけでもないが。

 ピコンとなったスマホを手に取り、はるかからの返信を読む。

『いいよ。私も丁度暇だったし、会いたかった』

 はるかからも「会いたかった」という単語を貰い、「つーか俺ら昨日会ったばっかじゃん。合わせてくれたんかな? 冗談交じりに送っとく」とLINEを返信。

「同じ事考えるてるなんて、俺ら案外相性良いのかもね」

『そうかも』

 ノリに合わせてくれてるもんだと思い、やっぱこの子はいい子だと思いながらたいちは返信を続ける。

「なんてね。照れちゃうね。とりあえずはるかは、どこか行きたいとことかあったりする?」

『うーん。行きたいとこか〜。夕方以降は花火大会も行くからね。カラオケとか映画観るくらいが丁度良さそう』

「プラスアルファ急遽やしな。映画行くとなるとなんか観たい映画とかある?」

『うーん、なんだろ。何が良いかな……。最近映画化した“アングレカム”とか?』

「あ、俺もそれ観たいと思っててん!」

『なら、そうしよ!』

 そうして、ついでにお昼ご飯も食べようという事で適当な集合時間を決めて、たいちは準備を始めた。

 スクッと立ち上がり、身体を伸ばして、はぁ、と息を吐いて一言。
 
「クァ〜ッ。アッツ……。部屋はクーラーで涼しいのにな……」

 たいちは頭をかきながら、洗面所へと向かった。


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