アングレカム-Angraecum Leonis-

第二十七話花火大会二日目の昼〈不穏〉



 今日は誰と花火大会に行こうかな、なんて考えながらさつきは、100%りんごジュースを啜る。

 机の上に置いてあるやりかけの課題を横目に見て、現実に引き戻されたくないのでソッとカバンの中へ直した。

 またるいと行っても良いとは思うのだが、周りの皆がどうするのかどうかが気掛かりである。

 1日目にカップル風に男女二人組みを作り、各々で適当な屋台を回り、前もって決めていた集合場所へ集い、皆で花火を見る事にしていたが、もしそのカップル間にて何かしらがあればそこの判断で来るか来ないかを決める、という事になっていた。

 そして、昨日の晩、何組かが集合場所に来なかった。一組(くうどうとゆうか)は違う事が分かっているが、他の組はもしかしたら、もしかすると、本当にカップルになっているのかも知れない。

 このタイミングで、さつきがるいと二日目の花火大会に行くと、周りからそう捉えられるかも知れない。

 そういう事で行くわけではないので、さつきとしては、そう誤解を招く事になると、るいも困るだろうという事で、誘い辛さがあった。

「るいくんと一緒に屋台回んの楽しかったけどな〜〜」

 でも、変に誤解されるとなぁ、と腕を組みながら考え、それなら後何人か誘ってみるか、という考えに至る。

 とりあえず、まきに声を掛けてみると既にひな達と行く事が決まっていたようなので、断念。

 ここに参加しないかと声を掛けてもらえたけれど、無闇に人数が増えるのもめちゃくちゃに人数の多い花火大会上面倒な事に繋がり易い。

 はるかにLINEをしてみると、彼氏と行く事になった、と返信が。
 
「は!? へ?! 彼氏!? ダレ!!」

 もしかして……と聞こうとするが、内緒、という一言だけ。

 気になって仕方がないさつきはジタバタと悶えるが、深くは聞けない為、止むを得ず断念。

「えー! いつの間に!? てか誰なのほんと昨日のはるかちゃんのペアってたいちくんやったよね? も、もしかして……?」

 ほーうと言いながらニヤニヤと笑い、さつきはもう一度りんごジュースを啜る。
 仮に付き合っているとしたら、他にもカップルが誕生しているのかも知れない。

 話を聞くのが楽しみなのも半分、自分だけ置いていかれそうな寂しい感じもある。
 だからと言って、さつき自身焦る必要が無いのだが。それは本人も分かっている様子。

 無理に好きでもない相手と付き合ったところで何の意味も無い。
 本当に好きになった相手と結ばれ、付き合う事に意味があるのだろう。

 さつきはそう考えているため、今まで無闇矢鱈と彼氏を作ろうとはしなかった。
 多分他の皆もそうなのだろう。

 この集まりが好きだから。みんな集まって遊んだり、ご飯食べに行ったり、喋ったりするその空間が心地いいから、今まで関係は続いたのだろう。
 しかし男女の仲というのもある。そして彼らはまだ若い。

 共に惹かれ合い、想いの蕾が咲いたのなら、花を咲かせたくなるのかも知れない。
 その花も、見事に開花するのか、はたまたすぐに枯れるのかは、人それぞれなのだが。

 見事に開花するか、枯れるかは分からないので臆病になり、一歩を踏み出せない者もいる。

 だが、その一歩も花火という立役者が出来たことによって、踏み出せた者もいる。

 さつきはそんな事を知らないまま、一頻りに話題になる残りの花火大会をどう過ごすかを考えた。

 しばらく考えていると、ドタバタと騒がしく階段を降りてくる母親から驚きの第一声が。

「……さ、さつき!! お爺ちゃんが……!!」

「……え?」
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