アングレカム-Angraecum Leonis-
第二十八話花火大会本番まで〈あなたと過ごす〉
盛大なる騒がしさを奏でる花火大会二日目。
昨日の夜に芽吹いたばかりの花は今宵もまた美しく輝きを放ち、自らの周りをオーラで覆い尽くしているせいか、周りが見えず、自分達しか見えないような、自分達の空間に居るような、そんな中ではるかとたいちは手を繋ぎながら、周りが演出する雰囲気と共に屋台を回りながらその時を、その一瞬をただただ、楽しみに楽しんだ。
ずっと笑顔の絶えない二人は、花火大会前にしたデートの疲れを知らないのかと思わせる程にはしゃいでいる。
昼間のデートを終わらせた際、はるかは一旦家に帰り、昨日とはまた違う浴衣を着てきている。
たいちは、その美しさに見惚れてしまい、しばらくの間ボォーッとしていた。時間の経った今となっても慣れない様子。
はるかが手を差し伸べ、耳まで赤くした顔でたいちの表情を覗きながら「繋ご」と言う。
たいちが自然と手を伸ばすと、指が交差される様に手が繋がれて次の屋台へと足を急がせる。
手を繋ぎながら目の前で走るはるかに手を引っ張られる形を取られながらも、たいちは笑いながら彼女について行く。
「ちょっ! 待てって! 早い!」
「はは! ごめんごめん」
「ぶはは! やばいってほんま」
「ちょっと喉乾いたね」
「せやな。なんか飲もっか」
そう言い二人は近くの自動販売機へ。たいちのお目当ての飲み物は売り切れていたので、適当な代わりの飲み物を購入。
はるかもオレンジジュースを買い、それを一口飲んで、次はどこへ行こうかと考える。
たいちも歩きながらゴクゴクと代わりに買ったサイダーを飲みながら、もうそろそろで花火の時間かな?とスマホの時間を確認する。
後三十分程した頃に花火の時間を迎えるようなので、はるかにそれを伝え、その時間を逆算しながら再度屋台を回る。
道中でたこ焼きやら唐揚げやらを買い、はしまきの屋台を見つけ、たいちが久しぶりに食べたいという事で購入。
はしまきだけ歩きながら食べ、はるかにも一口あげて、射的の屋台を見つけて射的をしようと残りのはしまきを食べ終え、屋台のおっちゃんにお金を払って、たいちは、はるかに何が欲しいのか聞く。
「ほれ、なにがいい?」
「えー、取れるん?」
「取れる取れへんやなくて、取るんや!」
「よっしゃ。んーと、じゃあ……あのクマのヌイグルミ!」
「オッケー! 任せろ!」
おっちゃんから貰った五発分の一発分の弾を銃に詰めて、射的の銃を構え、クマのヌイグルミ目掛け、数秒間を空けて、一発を放つ。
しかし、ハズれる。
再度構えて、放つ。クマのお腹部分に当たり、少しズレる。
周りからオォーッという声が上がり、たいち自身の集中力が増す。
更にもう一発分の弾を、銃に詰める。
「フゥー……結構ムズイな」
「頑張って!」
集中力を高めて、その一発にかける。
十秒程、息を吸って、ヌイグルミにじっくりと見つめる。
静かに銃の引き金を引き、周りの時が止まったような気がしながら、弾はヌイグルミ目掛けて突撃して行く。
ヌイグルミの頭部分に当たり、見事にヌイグルミは落ち、手に入れる事に成功。
周りからの盛大な拍手を送られながら、おっちゃんからヌイグルミを渡され、たいちはそのまま、はるかに手渡される。
「うわぁ!! たいちくん凄い! ほんと凄いと思う! ありがとう! 一生大事にするね!」
「はぁ! 取れてよかったぁ!」
二人そのまま、再度手を繋いで、花火が打ち上がる時間がそろそろだろうという事で、場所を移動した。
見事に咲いた二輪の花は、更なる美しさを奏で、夜の空に打ち上がる火の花で輝きを重ねられながら、その下で更なる愛を育んだ。