アングレカム-Angraecum Leonis-

第三十話花火大会本番まで〈視線の先には〉



  後ろに両親を引き連れ、弟のりくの手を差し引いて、歩くさくらは、横にいるくうどうとかんなに「どこから回る?」と問いかける。
 くうどうの手を繋いで、ニコニコと笑うかんなは、さくらに「かんな、りんご飴欲しい」と言う。

 その一言で、最初の目的地はりんご飴の屋台へと決まり、一向はそこへと向かう。
 途中見かけた綿あめの屋台で、りくが綿あめを1つ購入する。

「かんな、食べる?」

「うん! りっくん、ありがと。ぱくっ、んま!」

 気が付いたら、りくはさくらの手を離れ、かんなはくうどうの手を離れ、りくとかんなはお互いに手を繋いで歩いていた。

 その光景を見て、ほのぼのとするさくらとくうどうを見て、さくらの母がクスクスと笑いながら👬に言う。

「まるで、夫婦ね!」

「なにが?」

「いやぁ、あの二人確かに、年齢不相応な感じの雰囲気出してますよね」

 くうどうが腕を組みながら、りくとかんなの背中を見つめながらまじまじと答える。

「あ、確かに!」

「……え、いや、ちゃうちゃう」

 さくらの母は手を振り否定する。
 りんご飴の屋台へたどり着き、さくらは、りんご飴を購入して、りんご飴をかんなに手渡す。

「さくらおねーちゃん、ありがとお!」

 ぺろぺろと舐めながら、ニコニコと笑うその様は、本当に無邪気で素直な子供そのものだった。
 本当は母親が迎えに来てくれない事の哀しさを背負っているはずなのに。
 子供ながらに、大人にそれを感じさせない様ににしているのか。
 
 そんなかんなの大人な姿を見て、さくらは少し空しくなってしまった。
 無言でかんなの頭を撫でる。疑問符を浮かべるかんなは、撫でてもらった事の嬉しさから笑みをこぼす。

 その後、スーパーボールすくいを見つけ、くうどうが、りくとかんなにそれぞれ欲しいお面を聞いて、それを貰うために懸命にスーパーボールをすくって行く様を見て、かんなとりくは盛り上がっていた。

 お互いに欲しかったお面は、アンパンマンだったが、取れたのは1つだけだった。

「ごめんなぁ。仕方ねえ、もっかいするかな」

「いや、いいよ。くーどーにいちゃん。ほら、かんな、これ」

 そう言いながら、りくは、アンパンマンのお面をかんなの顔に付けてあげた。

「りっくん、いいの?」

「うん、前にパパに取ってもらったのあるし! 今度それでアンパンマンごっこしよ!」

「うん! ありがとお!」

「ふふ、やるじゃん、りく!」

 さくらはりくの頭を優しく撫でてあげる。
 
「へへ! ねえちゃんが、いつもおれにしてくれてた事マネしただけだよ!」

 さくらはりくの頭を撫でながら「たこ焼き食べる?」と聞き、りくが「食べる!」と言ったので二人一緒に、近くにあった、たこ焼きの屋台へと見つける。

 両親とくうどうは、神社内にあったベンチにて待っている、という事で、さくらは「わかった」とだけ言い、りくの手を引いて、たこ焼きの屋台へと向かう。

 たこ焼きを購入して、「さて、戻ろうか」と、母達の待つ場所へと向かおうとしたその時、さくらの目には見覚えのある人物が映った。

 気がついたらその人の事だけを見ていて、目で追っていた。

 何故だか、頭の中がその事だけでいっぱいになり、目の前がその人だけになり、辺り一帯が何も見えないような、その人以外何も無くなった空間のように思えてしまう。

 ボォーッとする姉を見かけねてりくは、さくらの袖を引っ張りながら声を掛ける。

「……ねえちゃん……?」
< 48 / 59 >

この作品をシェア

pagetop