アングレカム-Angraecum Leonis-
第三十一話花火大会本番まで〈夏祭りと、言えない言葉〉
ゲームを終え、りゅうのすけ、ひろあき、みうの三人はそろそろ花火大会に行こう、という事で、身支度をして、花火大会へと向かっていた。
歩いて20分程した距離に、花火大会の屋台が出並ぶ河川敷へと辿り着く。
(……なんだかんだで、りゅうと観に来れてよかったな……どこかでタイミング見つけて告《い》わないとな……)
「おい、ひろあき。昨日より屋台の数が増えてるぞ」
「そりゃあ、二日目の本番だし、一番人が集まる日やからね。昨日より屋台が増えて当然やって」
「そういや昨日は余興なんやっけ」
「そんな感じ。ほとんど本番と変わる事なんてないと思うけど。でも、昨日より大迫力の花火が楽しめる事は確かやで」
「へぇー。まぁ、なんでもいいからとりあえずたこ焼き食いに行くぞ」
「ふふっりゅうは相変わらずマイペースやね。
(……りゅうったら、こんな時までたこ焼きって……いや、こんな時なんて思ってんのみうだけか……)
「みうちゃんもたこ焼き食べる?」
「うん、食べる!」
ひろあきに問われ、みうは即答する。
「みーちゃんも食うんやな? おーし! おっちゃん! たこ焼き三つ!」
「あいよ! 900円ね!」
りゅうのすけは、お金とたこ焼き三つを交換して受け取り、みうとひろあきに一つずつ渡す。
即座にたこ焼きを一つ食べて、すぐさま熱さに悶えるりゅうのすけは「うめえ!!」と言いながら口の中をハフハフとさせながらたこ焼きを食べる。
「昨日食べたのとほとんど一緒でしょうよ……」
「あ、唐揚げもある。今日お昼食べてないから、お腹減ったんよね」
みうは屋台から香る唐揚げの匂いに涎を垂らす。
「いいね、唐揚げ。りゅうくんも食べる?」
「ん? おう。食おうかな」
たこ焼きの屋台から少し離れた場所に位置する唐揚げの屋台を見つけ、そのままの足で向かって行く。
するとその2つ隣の屋台にはしまきの屋台を見つけ、りゅうのすけは「俺、はしまきも食いてえから、ちょいひろあき俺の分も唐揚げ買っといて」と言いはしまきの屋台へと一人で行ってしまった。
「あ、オッケー」
唐揚げを三つ購入して、りゅうのすけの方を見ると、りゅうのすけはまだ並んでいる。はしまきの屋台は結構な行列が出来ていて、りゅうのすけはしばらく戻ってこないと伺える。
すぐ近くで待っていようという事で、屋台から少し離れた場所へとみうとひろあきは移動する。
「……ほんとあの人、マイペースやね」
「まあね。でも昔からそういうとこは変わってないから、安心するけどね」
「それは確かに」
「……昨日は見てる限りだと、告《い》えなかったんよね?」
「……分かった?」
「まぁ、さくちゃんとせいじくんと一緒に来てたから、なんとなく。それに暗い中で悲しそうな顔してたし」
「……なんで分かったの」
「なんでって、多少は分かるよ。暗闇って言っても、一分くらい目瞑ると慣れるし。それに俺結構あそこにいた時間長かったし、ある程度は見えるよ。でも、決定的だったのは、花火が打ち上がったその時かな」
「………………バレないようにしてたのにな………………」
「後で、せいじくんとりゅうくんに合流した時何があったのかは聞いたで。りゅうくんは、相変わらず自慢するってより、グチグチ言ってた感じやったけど」
「うん。あの人、ああいう事平気でするから。さくちゃんに対してカッコつける、ってよりも、説教垂れる事が第一やったみたいやし」
「やろうね。俺も小学校の頃、イジメられてて、助けられて、めちゃくちゃ怒られたから、なんとなく想像つく」
「……ホント変わってない……」
「りゅうくんはいつ迄もりゅうくんやからね」
「でも……でも……」
「うん」
「あんなとこ、すぐ目の前で見ちゃうと…………告《い》えないよ…………」
「……かもね。じゃあ、どうする? 告《い》わないで終わる?」
「…………どうせ告《い》ったって…………意味無いよ…………」
「そんなのは告《い》わないと分からないよ。結果は俺にだって分からないけど。でも、告《い》わないで後悔するより、告《い》ってスッキリしてほしいな。君の中のモヤモヤとかずっと残ったっきりになっちゃうよ」
「…………分かってる…………分かってるけど…………怖いの…………りゅうとのこれまでの関係が崩れるのが…………もし今日告って明日から気まずくなったらどうしようとか…………今日みたいにもう三人で遊べなくなるとか…………」
「それはきっと大丈夫だよ」
「……なんで大丈夫って言い切れるの?」
「だってりゅうくんだから。りゅうのすけという人間は、相手の気持ちを蔑ろにもしないし、真面目に受け止める人間やで。俺は今の今まで見てきたから良く知ってる。りゅうくんも三人で遊ぶの好きだから、関係が劣悪になるような結果にはならないんじゃないかな?」
「……うん。ダメだね。みう、自分の事ばかり考えてて、りゅうのことなんも考えてなかった。そうやね。りゅうはそういう人やった。ただ怯えて動けないのはみうやって言うのに。ただただ、逃げ出したいだけの口実を作りたいだけやって言うのに」
「ううん、誰だってそうなるよ。みうちゃんだけじゃない。誰だって怖いよ。俺は別に好きな人とかいないけど、でも仮に出来て同じ立場になったらみうちゃんみたいに怖くなるんだろうなぁ。って思うよ。その時はみうちゃんが背中押してくれる?」
「……うん! 勿論。ひろあきは幼馴染で親友だし! 任せて!」
「幼馴染で親友か。それはとても嬉しいなぁ。さて、しばらくしたらりゅうくん戻って来るだろうからそのタイミングで俺トイレ行って来るわ」
「……え? なんで?」
「この前言ったやん! 俺がそういう場を設けるって! 俺がトイレ行ってる隙に、告白しておいで。大丈夫。この祭りのトイレは毎年大行列出来て、なかなか戻って来れんから、時間はかかる。そこら辺は安心して」
「……ひろあき……あんたなんでそんな良い人やのに、彼女出来へんの?」
「やかましいわ!」
それから、少し経った頃にようやく戻ってきたりゅうのすけを加えて、水風船すくいや、射的を堪能する。
適当なタイミングを見計らって、ひろあきは「トイレへ行ってくるから近くのベンチで待っといて」と言って小走りでトイレへと向かって行った。
「……うぅ、元々フリのつもりやったのにマジでしたくなってきた……」
小走りで向かう最中、見覚えのある女の子を横切った。
(あれ、さくちゃん? 今日は家族で来てたんや)
ひろあきはそのまま急いですぐ近くのトイレへと駆けて行った。