アングレカム-Angraecum Leonis-

第四話放課後のカラオケ




 学校が終わり、放課後。たった数時間過ごした学校は長いようで短くあっという間に終わりを告げ、さくら達は靴箱で靴を履き替えている。

 明日は土日休み。そしてもう少ししたら夏休み。いろんな楽しみが待っている夏休みがもう少しで手の届きそうな今日。

 さくらは一番遅くに靴を履き替えて、まき達のいる場所へと駆けつける。

 まき、ゆうか、みう、はるか、さつき達と一緒にガールズトークに華を咲かせながら駅前にあるカラオケ屋へと足を運んで行く。

 カラオケに着くとそこにはクラスの男子が既にいた。
 背が高く、ガタイがしっかりとしたあきせ。優しそうな顔でまき達を迎え入れる。

 短髪でヘラヘラとした笑顔が特徴なくうどう。ヘラヘラしながらもある程度整った顔のおかげか誰もヘラヘラした顔を気にも留めない。

 筋トレが趣味の短髪爽やか笑顔のたいちは、ヘラヘラしてるくうどうの顔を見て何故か吹き出して笑ってしまう。

 背の高い茶髪をセットしたイケメンのせいじは何を歌おうかと曲選びに没頭する。

 特に何事も無く楽しいカラオケの時間は過ぎ去って行く。みんなそれぞれが様々な曲を歌い、盛り上がりを見せ、ずっと笑いが絶えなかった。

 さくらの初々しい歌い方に皆が癒され、ゆうかのスタンダードな上手さに皆が拍手を喝采する。
 まきとあきせの盛り上げ上手さで常にカラオケの盛り上がりは安定していた。

 くうどうのネタの詰め合わせかと言わんばかりの歌のチョイスに爆笑の渦を巻くカラオケのワンルームは、あっという間に退出時間を迎え、彼らは料金を払う為に談笑しながら部屋から出た。

 楽しい時間は一瞬で過ぎ去り、料金を支払い、カラオケの自動ドアを開けて、みんな一斉に外へ出る。

 背伸びをしながら、あくびをしてあきせはみんなに声をかける。

「いやぁ〜〜楽しかったな!」

 あきせはそう皆に話しかける。

「いや、ほんまにな?」

 たいちはそう言い、片手に持つジュースを飲む。

「あきせ君の男と女が一番おもしろかったな」

 まきはそう言いながら思い出し笑いをする。

「いや、待って? 俺のとびらをあけてのが面白かったやろ?」

「いや、くうどう君はネタ詰め込み過ぎてて、
笑いが止まらんかったわ〜〜!
あかん、腹痛い」

「せやろ? ゆうかちゃんは分かっとる」

「ふふふ」

 さくらは二人のやり取りを見て微笑む。

「どうでもいいけど、お腹減ったわ〜〜」

 まきがそう言いながら、腹を抑える。

「ほんまに。でもな、聞いて? 帰ったらお母さんがチキン南蛮作ってくれてるってLINEくれたから凄い楽しみやねん!」

 みうがそう言いながら、楽しそうに微笑む。

「え! チキン南蛮は羨ましい!
チキン南蛮食べたくなってくるやん!」

 さつきはそう言いながら、涎を垂らす。

「チキン南蛮が恋しい」

 ゆうかはそう言い、目頭を熱くさせる。

「チキン南蛮の心にしたみうちゃん恨めしや」

 まきは物悲しそうにみうの顔を覗く。

「なんでよ!」

「みうちゃん。単にまきちゃんがお腹減ったら、野獣になるだけやから気にしたらあかんで」

「野獣まき。恐ろしや……いや、魔獣か」

「きらーい! たいち君もあきせ君もきらーい!!」

「まきちゃん、今度ご飯食べに行こうよ
チキン南蛮でもなんでもいいし」

「はるかちゃん好き」

「んじゃ、俺は今から焼肉やから行ってくるわ」

「くうどう君がいちばん嫌い」

「まきちゃんやばいって。落ち着き」

 ゆうかはそう言いながらまきの背中を優しく撫でる。

「くうどう、また今度飯行こうな」

「おう。たいち。また予定言うわ!
あ、まきちゃん、俺今から焼肉行ってくるわ」

「いや、分かってるわ! さっき聞いたから〜〜!
もうくうどう君マジできらーい!!」

「ふふ。このメンバーで花火大会行ったらめちゃくちゃ楽しそうだね」

「それいいかも! さくちゃん」

「花火大会? あぁ、そういやもうそんな季節か」

 たいちはそう言いながらスマホを開きカレンダーを確認。

「クラスでその話してたで。俺は去年は行けてないから今年は行こうかなぁ〜」

 あきせはそう言いながら、背伸びする。

「俺は去年お母さんと行ってきたで」

「お母さんと仲良いってだけなのに、くうどうくんがお母さんと行って来たって事実だけでなんだか面白いのって、ずるいよ」

「まぁ、仲ええかは知らんけど
今のは別におもろいの狙ってへんぞ? さくちゃん」

「なぁ、くうどう君、焼肉連れてって」

 お腹を鳴らしながら、まきはくうどうに声をかける。

「まきちゃん、後で写真だけ送るわ」

「やっぱきらーい!!」

「花火大会このメンツで行くの楽しそうやけど、人数多いからなあ。当日の花火大会の人混み凄そうやからそこが難題かなぁと思うで」

 ゆうかはまきを横目に真面目に話し出す。

「それは確かにやな。
多分他も来るやろし。かずきとか、りゅうくんとかも誘うやろ?」

「せやろな。なおちゃんとか、ひなちゃんとか。多分他にももっと。当日、何人かに分かれたりしてもええかもやな」

 あきせがたいちにそう提案する。

「男女二人ずつに分かれたら、どこかのカップルが恋に発展するかも?」

「ほーう。にやにや」

「まきちゃん? さっちゃんの提案を聞いて何故うちの方見ながらニヤニヤするんかな? てかまきちゃんの方こそなんかあるんやない?」

「うちはもう彼氏おるからなぁ〜」

「まきちゃん彼氏おったん!?」

「うそやん! 大阪のおばちゃんやのに!? できたんやな!」

 たいちとあきせが二人して笑いながらまきにそう言う。

「なにー? 二人ともきらーい!」

「安心して。まきちゃんの妄想やから」

「ゆうかちゃんもきらーい」

「安心して。俺らも分かってる」
 
「そんな事信じるほどアホやない」

「なんなん!? あきせくんもたいちくんも!」

 「まぁまぁ、どうするかはまた追々決めることにしよ!」

「そだね、さっちゃん。とりあえず今日はそろそろ帰るよ。晩御飯食べなきゃだし」

 そうして各自解散し、各々の家へと帰宅を開始して行く。

 これから起こる花火と共に打ち上がる何かを知らずに。
 
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