アングレカム-Angraecum Leonis-

第三十三話花火大会本番まで〈笑いの向こう〉



 夏の青い木陰の近くで女子数人は、浴衣を着て談笑しながら、火の花を見るために、異空間へと続くその道を歩いて行く。

 明日になればその道はもう閉ざされてしまう。楽しい時間はもう終わってしまうのだ。

「さあ〜〜……ってと……行くで、まきちゃん、ゆうかちゃん、まやちゃん」

「う、うん」

「ん? うん。途中もしくうどう見かけたら、かんなちゃんの様子見たいから教えてな」

「了解や、ゆうかちゃん」

「そんでどこに行くつもりなんや」

「……ふふふ、良くぞ聞いてくれましたまや姐さん! 勿論それは……さとみの花火大会ツアー、やで。」

 何かしらの適当な特別感を付け加えたかった。今の時間をより更に楽しくしたかったのだ。
 みんなも笑っていたのでひな自身もより楽しい気持ちになる。
 今日も楽しく終わりそう。今年の花火大会はみんなと来れて本当に良かったなぁ。
 各々はそう思考をシンクロさせて道々を歩いて行く。

 昨日の話、この前の話、最近あった話、昨日の集合場所に来なかった者達はあれからどうなったのかの話、昨日の夜、迷子を保護した話など……様々な話題が飛び交う中、彼女らは花火大会の会場である神社へと辿り着いた。

 昨日も物凄い人集りでの花火大会だったのに、今日は比較にならない程凄い数の人が集まり、今日の花火を待ち惚けている。

 ただ空に花火が打ち上がる、というそれだけなのに、これだけの人々が集まる、という現状にただただ開いた口が塞がらないひな達一行は、互いに笑い合いながら近くにあった焼きトウモロコシを購入しに屋台へと向かう。

 焼きトウモロコシを購入したひなとまきは、それをどっちが早く食べられるのか、という勝負を始める。

 本当に女の子なのかと、ダチョウ俱楽部の弟子か何かじゃないかと疑うレベルのスピードでトウモロコシを食すひなとまきを見て、ゆうかは「やばーい」と言いながらそれを見て笑う。

 まやも腹を抱えながら笑い、勝負の結果ひなが勝ったので、ノリでひなの片手を持ち上げ、「winnerひな!」と、レスリーを気取る。

 また更に笑い合い、花火大会までの時間を皆で楽しみ合う。

 ……話はカップルの話に戻り……。

「かずきくんとなおちゃんは、どうなったんかな」

 まきはかき氷を食べながら皆に話を振る。

「なおちゃん、ひ弱やからなぁ」

 ひなはそう言いながらフランクフルトを頬張る。
 
「途中で疲れて、かずきくんが付き添った的な?」

 まやはそう推測しながら唐揚げを食す。

「んあぁ〜〜あり得そうではある」

 ゆうかは笑いながら焼きそばを啜る。

「たっちんとはるかちゃんは付き合ってそうじゃない?」

 ひなはフランクフルトを齧りながらそう言う。

「あそこは怪しい」

 まきはかき氷の影響でキーンと鳴る頭を抑えながら何処か鋭い眼光でそう言う。

「どうなんかなぁ」

 適当な相槌を打ちながらゆうかは美味しそうに焼きそばを食す。
 
「でも、お似合いと言えばお似合いな感じするけどね」

 まやはそう言いながら箸巻きを食べる。

「たっちん、優しいやつやからなぁー。はるかちゃんも大人しいけど、そういうとこに惹かれた的な?」

 ひなはそう予想しつつ、たこ焼きを食べ始める。

「それ、どっちから告白したんやろな」

 ゆうかは食べ終えた焼きそばの容器を片付けながらそう聞く。

「たいちくんからとか?」

 まきは、未だキーンと鳴る頭を抑えつけながら予想する。

「たいちくんが、はるかちゃんの事好きなん意外やったけどなぁ〜」

 まやはそう言いながら箸巻きを食べ終える。
 
「意外で言えばどっちも意外やって。そんな匂い全くさせてへんしさ。どっちも」

 ひなはたこ焼きを頬張りながら、お茶を飲む。

「知らん間にって感じやな」

 まきは再度食べ始めたかき氷の影響で再度キーンと鳴る頭を抑え、無駄に凛々しい顔付きでそう言う。

「まぁ、他にカップル出来てようがひなは応援するだけやからええんやけどさ。とりあえずひなにも彼氏くれへん?」

「それ言ったらうちにも欲しいわ〜。うちにも彼氏ください〜」

「うわうわ。ひなまやという美女二強が何言ってるんや」

「ほんまやでな」

「いや、まきちゃんもゆうかちゃんも思い切りブーメラン刺さってるからな」

「ほんまそれ。ひなとまや姐さんが美女は否定せえへんけど、二人もなかなかやで?」

「怖いわー。美女の言う褒め言葉は信じられんからなぁ……」

「よー言うわ」

「まぁ、確かにさとみは美人やけども。あれかな、美人過ぎて近寄り難い的、な……?」

「それはあるかも知らへん」

 ゆうかは軽く笑いながらそう返す。
 ある程度話し終えた時、ひなはたこせんが食べたいと言い、近くを散策。
 すると、少し離れた場所にあった、たこせんの屋台を見つける。

 河川敷の近くの屋台へと向かい、たこせんを買いに向かう。各々はたこせんを購入して、それ食べながら、また適当な話を続ける。

「明日からまた課題やらなあかんなー」

「ほんまやなぁ。またひなちゃん家集まらな」

「うちもまだ半分くらいしか終わってないと思う」

「ゆうかちゃんも私らと一緒に勉強会する? 定期的に集まって、課題したり、テスト勉強しよってなってるねんけど」

「え、それええなぁ! なになに? 私の知らんとこでそんなやってたとかずるいで? まやちゃんありがとう! またする時連絡して欲しい!」

「オーケー! またLINEするね」

「ゆうかちゃんが勉強会参加とか、めちゃくちゃ勉強捗るやん」

「まきちゃんも頭ええけど、ゆうかちゃんもめちゃくちゃ頭ええからなあ……。それに賑やかになりそうやなぁ! みんなで楽しく勉強しようなぁ」

「うんうん。夏休み明けのテストもあるしなー」
 
「あぁ〜。ゆうかちゃんのその言葉で現実を思い出した……この楽しい時間とも、もう少しでおさらばなんか……」

「まや姐さん……今この時を楽しもうや」

「そやね。ほら、はしまきも食べよ?」

 まだまだ花火が打ち上がるまで時間がある。彼女らはそれまでの時間を精一杯に楽しく過ごした。
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